セルビア戦で見極めたい3つのポイント=W杯の門番から課せられる守備改善の追試

清水英斗

W杯出場国クラスの実力を誇る難敵

セルビアは2010年に大敗した難敵。日本は柿谷(写真中央)ら前線の選手が得意のコンビネーションを発揮できるか 【写真は共同】

 2014年、ブラジルワールドカップ(W杯)欧州予選のグループA。すでにセルビアはベルギー、クロアチアの後塵を拝する形で敗退が決まっている。11日に日本が対戦するのは、王国ブラジルの土を踏むことなく姿を消した国だ。

 しかし、その実力を侮ってはならないだろう。もともと、このグループAは、第3シードからベルギーが入ってきた時点で、第1シードのクロアチア、第2シードのセルビアにとっては災難と言うしかない組み合わせだった。近年、プレミアリーグを中心に多くの選手が活躍し、目覚ましい成長を遂げたベルギー。出場が決まれば、本大会のダークホースに挙げられてもおかしくはない。セルビアはそのベルギーと、クロアチアに対して予選の4戦で1勝も挙げることができず、敗退の憂き目を見た。本来ならばブラジル本大会に名を連ねていても不思議はないセルビアだが、今回はクジ運に泣いた背景がある。まずはその認識を持っておきたいところだ。

 今回のセルビアは、主力と控えが交じる1.5軍のチームではあるが、英雄デヤン・スタンコビッチの引退試合という位置付けによるホームの声援やモチベーションを鑑みると、やはり難敵であることに変わりはない。

 しかし本大会のグループリーグを見据えるなら、南アフリカW杯で日本がデンマークを破って突破を決めたように、勝ち点3をリアルに計算しなければならない相手であるのも事実だ。

南アW杯前に押された「失格の烙印」

「W杯の門番」

 筆者はセルビアという国について、そのような印象を抱かずにはいられない。思い返せば2010年、南アフリカW杯直前となる4月、当時の岡田ジャパンはホームでセルビアと強化試合を行った。極東の地へレギュラーを派遣することを避け、2軍のメンバーで来日した東欧の強豪国に対し、日本は0−3で大敗した。

 とはいえ、「大敗」という言葉がふさわしいのかどうかは分からない。ボールポゼッション率70パーセントを記録した日本代表は、わずか30パーセントしかボールを保持しなかったセルビアの守備ブロックを破れず、逆にカウンターを食らい続け、最後はセットプレーからも失点した。ポゼッション率はバルセロナ級、しかしスコアには反映されず。
 日本は引いた相手をぶち破る打開力に欠け、バランスを失った状態からカウンターの一発に沈んでしまう。岡田ジャパンの致命的な弱点が、白日の下にさらされた試合だった。その後、本大会ではそれまでのスタイルを刷新し、ラインを低く下げる守備的な戦術へシフトし、W杯ベスト16に食い込んだ。

 その勝負師としての決断は、さすが岡田武史監督と感嘆するしかないが、一方、それ以外のスタイルでは勝利への道が見通せなくなったのも事実だろう。当時のセルビア戦は日本代表側もメンバーが完全にはそろっておらず、この試合だけを要因と言うわけではないが、最も分かりやすい形で弱点を明らかにされたのは間違いない。「大敗」というより、「失格の烙印(らくいん)」。それほどの衝撃を受けたことを覚えている。

 まさにセルビアは、W杯の門番。10年の対戦では「今の戦い方では、正面玄関からは入れませんよ。どうぞ裏口にお回りください」と言われたような、そんな思いが残った。

 3年をかけて熟成を進めたザックジャパンも、岡田ジャパンと同じく、今回のセルビア戦によってテイスティングされる。その見極めにおいて、具体的なポイントとなるのは何か? 筆者は「コンビネーション」、「カウンターへの対処」、「サイドチェンジへの対抗」の3つを挙げておきたい。

巨漢DFを避けるコンビネーション

 セルビアのDFは、188センチのブラニスラフ・イバノビッチ、187センチのアレクサンダル・コラロフを筆頭に、体が大きく、球際の強さを備えたタイプが多い。単純にフワフワとクロスを上げるだけではゴールに迫るのは難しいだろう。柿谷曜一朗が1トップに入ったことで前線のコンビネーションがグンと高まった日本が、巨漢DFとの当たりを避けながらスルスルとすき間に仕掛けることができるか。

 もちろん、セルビアもそれを警戒してすき間を引き締めるようにコンパクトなブロックを作る可能性はある。しかし、今回の試合がセルビアのホーム、さらにスタンコビッチの引退試合という背景を考えると、10年ほど自陣に引きこもるゲーム運びは考えにくい。そうなれば、前に出てくることでスペースが空き、日本が得意とするコンビネーションを発揮するチャンスも訪れるだろう。それを得点という結果につなげられるか否か。これは第一のポイントと言える。

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著者プロフィール

1979年12月1日生まれ、岐阜県下呂市出身。プレーヤー目線で試合の深みを切り取るサッカーライター。著書は「欧州サッカー 名将の戦術事典」「サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術」「サッカー観戦力 プロでも見落とすワンランク上の視点」など。現在も週に1回はボールを蹴っており、海外取材では現地の人たちとサッカーを通じて触れ合うのが楽しみとなっている。

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