加藤凌平が世界体操2位で示した光明=内村に続くオールラウンダーの継承者へ

矢内由美子

内村から刺激「自分も個人総合でトップを」

大会4連覇を達成した内村(右)との差を詰めていくことが、加藤の今後の課題となる 【写真:Enrico Calderoni/アフロスポーツ】

 順天堂大1年に進学したばかりの昨年夏。ゆかのスペシャリストとしてロンドン五輪代表の座をつかんだ加藤は、団体銀メダル獲得に大きく貢献しながらも、個人総合で世界の頂点に立った内村から強い刺激を受けていた。

「次は自分も個人総合でトップを目指したい」

 内村の背中を追うことを決意したそのときから、日々の練習への取組みはさらに集中度を増し、苦手とするあん馬やつり輪にも積極的に取り組むようになった。
 昨年11月の全日本選手権団体戦では、同学年の野々村笙吾らとともに、内村率いる社会人のコナミを倒して順天堂大が優勝。団体戦で多くの種目をこなしながら、オールラウンダーとしての実力を徐々につけていった。

 だが、順調に成長を遂げつつあった今年5月、衝撃的なアクシデントが加藤を襲った。東日本インカレの練習中につり輪のベルトが切れて肩を痛めたのだ。
 折しも、世界選手権の代表選考会を兼ねたNHK杯が直後に迫っているタイミングでのアクシデント。「交通事故のむち打ちのような症状」(加藤)で、肩だけでなく、首や背中にも痛みが出た。
 しかし、加藤は耐えた。激痛に肩を押さえながらもNHK杯で内村に続く2位になり、個人総合での世界選手権代表の座をつかんだ。

内村との距離を縮めていくために必要なこと

 事故から4カ月あまりで見事な“世界2位”。加藤自身は口に出さないが、順天堂大の原田睦巳監督は「つり輪の事故は結構響いていた。スッキリ治っていなかったし、あの時期に練習できなかったことで、その後に無理をしてまた痛みが出たり……。そういうことを考えると、銀メダルは本当に良かった。これでまた一つ、次のステップに行ける」と目を潤ませた。

 今後は内村との距離をどのようにしていくかが課題になる。
 6種目ともハイレベルでこなすことのできる内村と比べ、加藤はつり輪とあん馬という明確な弱点がある。まずはその差を少なくしていくことが必要だ。
 つり輪に関しては、D難度の「カトウ」という新技を編み出すなど工夫を見せているのは心強い。また、内村を上回る難度で構成しているゆかでは、実施点であるEスコアを上げていくための取組みが必要になる。
「今回は世界で2番目という位置付けがしっかりできた。航平さんとの差を少しずつ詰めて、本当の意味でのライバルという存在になっていきたい」
 9月に20歳になったばかり。加藤の前途の明るさが、そのまま体操ニッポンの未来の明るさにつながっていく。

<了>

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著者プロフィール

北海道生まれ。北海道大卒業後にスポーツニッポン新聞社に入社し、五輪、サッカーなどを担当。06年に退社し、以後フリーランスとして活動。Jリーグ浦和レッズオフィシャルメディア『REDS TOMORROW』編集長を務める。近著に『ザック・ジャパンの流儀』(学研新書)

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