スイスで評価を高める久保裕也の歩み=心身ともに成長し日本代表へ近づく

チェーザレ・ポレンギ

日本代表に復帰する希望は捨ててはいない

一度だけ招集された日本代表に対する思いは、今でも強い 【Getty Images】

 順調なスタートを切った久保だが、一つだけ心に引っかかっていることがあるはずだ。12年に、彼は一度だけアルベルト・ザッケローニ監督が率いる日本代表チームに招集されたことがあった。大阪で行われたアイスランド代表との親善試合で、5人の新戦力の中の一人としての招集だった。

 結局、出場機会は訪れなかったが、今でも日本代表に復帰する希望を捨ててはいない。「もちろん、代表でプレーしたいとは思っています。諦めてはいません」と彼は話していた。

 イタリア人指揮官は、選手たちに何を要求するかを明確にしている。フィジカルコンディションの良さと豊富な国際経験、そしてチームのために献身的にプレーすることだ。スイスでプレーする久保は、その3つの要素をすべて高めるために最適な環境にいると言える。

 先駆者たちの多く(たとえば中村俊輔ら)がそうだったように、日本でプレーしている時にはフィジカル面に何の問題もないように見えていた久保だが、ヨーロッパのチームメートたちの中に入るとやや線が細いように思える。だが、成熟した年齢を迎えた彼をクラブのメディカルスタッフがしっかりとケアし、筋力の向上を図ってくれることは間違いない。欧州のリーグでプレーすること自体も彼を強くしてくれるだろう。

必要なのはオープンマインドと多少の幸運

 スイスに住み、スイスでプレーしていることは、選手としても人間としても必ず久保を成長させるはずだ。すでにこの最初の数カ月だけでも大きな成長が感じられ、立命館宇治高校のカフェテリアで話していた頃とは見違えるようだ。

 また、トップ下という新しいポジションに置かれることで、久保はこれまでより密集した地帯の中でプレーしている。ザッケローニ監督が選手全員に要求するディフェンス面も向上させていくことが期待できるだろう。

 ワールドカップをどのような形で迎えることになろうとも、今年が久保裕也のキャリアにとって重要な意味を持つ1年となることは間違いない。若い選手が成功するために必要なものはすべて兼ね備えている。意志の力も、プレーに専念する姿勢も、高い技術もある。今は本能的にプレーしている部分も、経験を重ねれば試合を読むインテリジェンスに基づいたプレーへと進化していくはずだ。彼に必要なものは、自分自身を失わないようにしながらもオープンマインドを持つこと、常に学びたいという意思を持って成長していくこと、あとはもちろん多少の幸運だけだ。

<了>

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著者プロフィール

イタリア、ミラノ生まれ。1994年より日本に滞在。現在はGoal Japanの編集長として活躍、また今季は毎週水曜日Jスポーツ『Foot!』に出演中。ツイッターアカウントは@CesarePolenghi

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