スイスで評価を高める久保裕也の歩み=心身ともに成長し日本代表へ近づく
技術を評価され、トップ下で起用される
ヤング・ボーイズのフォルテ監督は久保の技術にほれ込み、トップチームでの起用を決めた 【写真:アフロ】
「トップチームに残れるのかどうかも分かりませんでした。何週間か練習に参加して、日本に送り返されるかもしれないと思っていました」と話す久保だが、ヤング・ボーイズのコーチ陣は彼への信頼を強め、24番のシャツを委ねることになった。
久保のボール扱いの技術を評価したフォルテ監督は、彼を純粋なストライカーのポジションよりは、トップ下で起用する方が効果的だと判断した。「ボールにたくさん触れますからね。最初はちょっと慣れない部分もありましたが、少しずつ慣れてきました。試合に出られるならどのポジションでもいいです」と、久保も納得の上でこの決定を受け入れている。
スイスでの生活はより楽しめるものに
「スーパーサブ」としての起用が中心ではあるが、久保はこれまで11試合に出場し、リーグ戦で3得点、カップ戦で2得点を記録している。チームは開幕5連勝のあと3連敗を喫したとはいえ上位を維持しており、まずまず順調なスタートを切ることができた。だが、久保自身もヤング・ボーイズも、一歩ずつ前進していきたいと考えている様子だ。
「監督からもチームメートからも、タイトルという言葉はまったく出ていません。チームの雰囲気はすごくいいですけどね。いくつか負けはしましたけど、不運な部分もありましたし、負けた試合でもいつも良いサッカーはできていたと思います」
ダービーで2ゴールを決め、逆転勝利に貢献
特に素晴らしかったのは2点目のゴールだ。ほとんど角度のない位置から左足で強烈なシュートをたたき込んだ久保は、スイスメディアに大きく取り上げられ、早くも欧州各国のスカウトの注意を引き付け始めた。試合後にはサポーターがわざわざゴール裏に彼を呼び寄せ、彼の名前のチャントを熱唱して活躍に感謝していた。
だが、それ以上に彼が確固たる評価を得たのはその1週間後、8月4日の試合だったように思える。2−1でリードしていたチューリッヒとのアウエーゲームの終了間際、久保はDF陣の間をすり抜けてGKの目の前に抜け出すと、きわめて冷静なタッチでボールを浮かせてネットを揺らし、チームの勝利を確定させた。未来に向けて大きく期待の高まる見事なプレーだった。