変革が結果に表れない男子バレーの歯痒さ=初めて世界選手権出場を逃し生じた迷い

米虫紀子

失われた真剣勝負の場、成長の手段は?

不安な心境を吐露した主将の山村。3年後のリオまでに強化は進むのか 【坂本清】

 福澤達哉は、韓国戦の前日、自分に言い聞かせるようにこう語っていた。
「今まではミスを抑えるということをずっと言われ続けてきて、それが逆に『じゃあまずは入れていこうか』という迷いにつながっていたと思う。受け身になって自分のリズムを崩すのは一番やってはいけないこと。そうじゃなくて、常に攻める姿勢を持って打つことで、良いスイングや良いリズムにつながる。各個人でメンタルの持っていき方やルーティーンを作って、アグレッシブに打つということを今回練習でやってきたので、それをコートで出したいと思います」

 しかし、韓国戦で練習の成果を発揮することはできなかった。

 サーブは昨年のロンドン五輪世界最終予選でも大きな課題だった。ここ数年の国際大会で繰り返されている「大事なところでサーブが機能せず、試合にも勝てない。だからよけいにミスを恐れてベストなサーブを打てない」という負の連鎖は、監督が代わったからといって簡単に断ち切れるものではなかった。

 サトウ監督は、「練習を数多く積んでいくことで改善されていくと思う」と言うが、それだけで修正が可能だろうか。海外の強豪との真剣勝負の中で、プレッシャーの掛かる状況を多く経験することが必要ではないだろうか。そのための貴重な場である来年の世界選手権の出場権を逃したことは大きな痛手である。来年は海外遠征をスケジュールに組み込むと思われるが、それで十分だとは思えない。

 例えば、全日本の場だけでなく、スキルアップと精神的な成長のためにも、海外のリーグでプレーすれば、何か変わるのではないかと思うのだが。

強化の遅さは選手の不安にもつながる

 初めて外国人監督が就任し、5月20日に新チームが始動してからは、サーブレシーブのフォームを変え、相手の高いブロックにシャットアウトされない打ち方を磨いた。ワールドリーグ後は、チーム内で「ビジョン」と言われるコミュニケーションに取り組んできた。

 日本の選手は試合中ボールばかりを目で追ってしまう傾向があるという。そうではなく、ボールから一度目を離して相手コートの動きを見て、先を読み、それを声に出して周りに伝え、コート内で情報を共有する。それが「ビジョン」であり、サトウ監督の掲げるスマートバレーの一貫だ。そのために、合宿中は1対1のパス練習で、オーバーパスを上げた直後に前転や後転をして、いったんボールから目を離し、立ち上がってまたパスを返すという練習までした。

 サトウ監督が就任してから取り組んできたことは、ほとんどが基本的で地味なものだ。まだ完全にものにできてはいないし、それができたからといって、急に強くなるというものではない。目先の勝利のための思いつきの強化ではなく、先を見据えたベースを作ろうと、少しずつ積み上げている段階だ。練習方法は多彩で工夫がある。だからワールドリーグや今回の結果だけで、今のやり方はダメだと言うことはしたくない。そもそもチームが始動してからまだ約3カ月だ。

 ただ、今回の試合内容や、猛スピードで強くなっている韓国を見ると、どうしても、「日本はこのままでいいのか?」と思ってしまう。チーム立ち上げ当初、選手たちをイキイキとさせていた新鮮な感動も、薄れているように見え、覇気も一体感も伝わってこなかった。

 選手にも迷いは生じている。主将の山村宏太は、韓国戦の後こう明かした。
「確かに不安にはなる。でも、じゃあ元に戻すのか、根性バレーに戻るのか。それでは結局、前以上にはなれないと思う。ある程度の結果は出るかもしれないけど、やっぱり目指すところは“ある程度”じゃないので」

 もちろん後戻りしてはいけない。ただ、今のようなスローペースでは3年後のリオデジャネイロ五輪に到底間に合わない。当然7年後の東京五輪にもつながらない。強化のスピードアップが、絶対に必要だ。

<了>

2/2ページ

著者プロフィール

大阪府生まれ。大学卒業後、広告会社にコピーライターとして勤務したのち、フリーのライターに。野球、バレーボールを中心に取材を続ける。『Number』(文藝春秋)、『月刊バレーボール』(日本文化出版)、『プロ野球ai』(日刊スポーツ出版社)、『バボちゃんネット』などに執筆。著書に『ブラジルバレーを最強にした「人」と「システム」』(東邦出版)。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント