変革が結果に表れない男子バレーの歯痒さ=初めて世界選手権出場を逃し生じた迷い

米虫紀子

全勝対決の日韓戦で完敗

韓国に完敗し、肩を落とす選手たち。初めて世界選手権出場の切符を逃した 【坂本清】

 世界選手権の出場権を懸けたアジア最終予選が9月8日まで開催され、日本は2勝1敗の2位となり、4チーム中最上位にしか与えられない来年の世界選手権の切符は、韓国の手に渡った。日本はこれまで14大会連続で出場を果たしていたが、今回初めて出場権を逃した。

 カタール、ニュージーランドにストレートで2連勝した日本だが、最終日の韓国戦はセットカウント0−3の完敗だった。

 韓国とは今年のワールドリーグ第1週にも対戦し、2連敗していた。その試合中にケガをしたムン・ソンミンをはじめ、故障者が続出した韓国は、ワールドリーグからメンバーを半分入れ替えて今大会に臨んだが、その韓国に日本は歯が立たなかった。

 日本は今大会、筑波大学4年の出耒田敬や昨季V・プレミアリーグ最優秀新人賞を獲得した千々木駿介という若手がメンバー入りし、出耒田は全3戦に先発。しかし、今大会の数少ない光明も、韓国の21歳、チョン・ガンインらの強烈な勢いの前ではかすんでしまった。

 また、20年近くイタリアのリーグやイラン代表の監督を務めた経験豊富なパク・ギウォン監督の老練さに対し、日本のゲーリー・サトウ監督のさい配は後手に回った。すべてにおいて韓国が上回っていたと言わざるを得ない。

 日本は8月に米国遠征を予定していたが、8月下旬にワールドリーグの入替戦が行われることになり遠征をキャンセルした。しかし、入替戦はいまだに行われておらず、結果的にワールドリーグ以降約2カ月間も対外試合ができなかった影響は否めない。

勝敗を分けたサーブ

 第3セット、日本がサーブミスをしたり、山なりのイージーなサーブを入れていくたび、韓国ベンチの控え選手たちは「ハハッ」と笑った。「日本ってこんなものか?」と拍子抜けしているようだった。

 両チームの一番の差はサーブだった。

 韓国にサーブ力があることは分かっており、日本は先行しながら試合を進め、韓国に思い切ったサーブを打たせない展開にしなければならなかった。しかし日本は出だしからサーブミスが多く、たまに強いサーブが入っても韓国のレセプション(サーブレシーブ)にきっちり返された。逆に韓国は効果的なサーブを繰り出した。強烈なサーブでポイントを奪うだけでなく、前後に揺さぶって日本のスパイカーを1人ないしは2人潰し、その他のスパイカーに的を絞ってブロックとディグで拾うというトータルディフェンスが機能していた。

課題のメンタリティーは克服できず

 韓国戦の前日、日本チームのサーブについてリベロの永野健に聞くと、歯切れが悪かった。

「練習の中では良くなっています。ただ、試合の、切羽詰まったところで打てるかどうかは、ココの問題ですからね……」と言って、心臓のあたりをドンとたたいた。

 今年初めての国際大会出場となった清水邦広は、韓国戦後、ショックを隠しきれなかった。
「プレッシャーが掛かる中で、日本の選手のメンタルが弱かった。(サーブは)ミスしちゃいけないという気持ちがあって、萎縮してしまい、思い切り打てなかったり、(サーブの)トスが安定しなかった」

「今の時代のバレーはサーブとレセプションがキーになる」ととらえるサトウ監督は、ワールドリーグ後、サーブを一番の強化ポイントに掲げていた。
 かといって、ひたすらサーブを打ち続けるといった練習はしない。ゲーム形式の中で、「サーブ権を持つチームが得点を挙げた場合にのみ1ポイント」というルールのもとで対戦。なおかつ、スピードガンで計測し、例えばジャンプサーブなら、「時速100キロ以下のサーブだった場合は得点してもポイントにならない」という条件をつけ、ミスなく強いサーブを打たなければならない状況を作って練習を重ねた。

 また、負のメンタリティーを変えようともしてきた。サトウ監督やデービッド・ハントコーチは、何度も選手にこう語りかけたという。
「サーブに向かうときに、前のミスを引きずって、終わったことを振り返るんじゃなく、ポジティブに、『また自分たちが点を取るチャンスがきたんだ』という風に考えよう」

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著者プロフィール

大阪府生まれ。大学卒業後、広告会社にコピーライターとして勤務したのち、フリーのライターに。野球、バレーボールを中心に取材を続ける。『Number』(文藝春秋)、『月刊バレーボール』(日本文化出版)、『プロ野球ai』(日刊スポーツ出版社)、『バボちゃんネット』などに執筆。著書に『ブラジルバレーを最強にした「人」と「システム」』(東邦出版)。

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