代表招集の正当性を示したFC東京の3人=白熱の多摩川クラシコで見せた持ち味
失点は個ではなく組織の問題
日本代表に招集された森重(左)は、後手に回る展開でも、個の力を随所に発揮した 【写真は共同】
重要な局面ではことごとくワンツーでFC東京の鼻先をかわして先手をとり、そこにレナトと大久保のドリブルがつなぎの役目を果たす。組織的な攻撃に個人技が絡む、完璧な崩しだった。
日本代表に選ばれていないのが不思議なくらいの中村と大久保がけん引し、レナトとピニェイロのブラジル人ふたりが脇役にまわる川崎の攻撃は、清水や大分のそれとはスタイルも質もすべてが異なっていた。いわば未知との遭遇に、FC東京は対処しきれなかったのだろう。
守備は組織で行うもの。その組織対組織の部分では敗れたが、決して日本代表組個々のクオリティーが低かったわけではなく、むしろ個の部分、あるいは失点場面以外ではよくやっていた。
高い集中力で戦い抜いた3人の代表組
森重はDFラインでの跳ね返しはもちろん、後半6分、三田啓貴の左コーナーキックに合わせたヘディングシュートでも高さと強さを示していた。高橋もボールを奪ってからの展開や積極的なミドルシュートで持ち味を出していたし、権田も2失点目の場面では、大久保の至近距離のシュートをはじく反応の速さを見せていた(そのボールがポストに当たって跳ね返り、中村に渡ってしまったのは不運だった)。加えて言うなら、徳永は対人が相変わらず強く、おっとり刀で駆けつけた東アジアカップでの好守がフロックではなかったことを証明してもいた。
攻撃から守備の切り替えでラインを上げるスピードが遅ければ権田から叱咤(しった)が飛ぶ。3人の代表組から、チームの質を保とうとする集中力が欠ける場面はほとんどなかったはずだ。
自分の力を信じ、気持ちで負けないこと
日本代表としてウルグアイとの親善試合に臨むにあたって、試合後、森重はこう語った。
日ごろ、FC東京のランコ・ポポヴィッチ監督は、まずクラブで良いプレーをすること、結果を出すことを求めている。それが代表につながるのだと。普段の良いところも、川崎に抗(あらが)いきれないところもあったが、それがいまの実力だ。
「(ウルグアイには)絶対に負けないという気持ちでやらないと。初めから気持ちで負けていてはいけない」と森重は続けた。自分の力を信じ、どんな相手にも気持ちで負けないという決意は、先行される度に追いついて引き分けに持ち込んだこの多摩川クラシコでの奮闘からも感じられた。以前なら失点のショックを引きずって敗れていたかもしれない。そう考えると、この反発力の強さをもって精神的に成長したと言ってもいい。
そのたくましさで日本代表に貢献する備えができていることを、森重の言葉は伝えている。
<了>