個性派・ラドワンスカが見せた完璧な勝利=ウィンブルドンテニス第8日

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ラドワンスカ、リを破りメジャー初制覇へ前進

リを破ったラドワンスカ(写真)が準決勝進出を果たし、メジャー初制覇へ大きく前進した 【Getty Images】

 アグニエシュカ・ラドワンスカ(ポーランド)は不思議な選手だ。セリーナ・ウィリアムズ(米国)、マリア・シャラポワ(ロシア)、ビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)とパワーヒッターが覇を競うツアーで、淡々と細々と、しかし、個性的なテニスをしっかり発揮して世界4位の地位を維持している。
「柔よく剛を制す」を地で行くラドワンスカの世界に、ナ・リ(中国)が飲みこまれた。ウィンブルドンテニスの女子シングルス準々決勝で、ラドワンスカが2−1でリに勝利したのだ。

 時間とスペースを有効に使うラドワンスカに対し、左右からの決定打を持つリは一気に打ち崩したい。リズムをつかんだラドワンスカからは、偶発的なポイントは期待できない。第1セットの第1ゲーム、いきなりラブゲームでサービスブレークした後、続く第2ゲームの最初のポイント、ラリーからネットに出たチャンスボールをボレーで外す。そのままリは、ラブゲームでのブレークバックを許している。最初の「もし」を作ってしまったわけだが、振り返れば、それもパズルの一片に過ぎない。

 緊張のラリーが続き、リがバックサイド奥にショットを放り込めば、ラドワンスカが態勢を崩しながらもベースライン上に返球する。第4ゲーム、リの40−15からラドワンスカのロブ、バックハンドのクロスが微妙な軌跡を描いてライン上に。デュースから今度はリがバックハンドのウイナーを2本、センターコートの奥にたたきき込んでサービスキープした。繰り返される「線上のラリー」に観客は息を飲んだが、完全なウイナーでなければポイントが取れない展開はいかにも苦しい。ゲームを押していたはずのリがいつに間に劣勢に回り、ポイントを奪われていった。

いつの間にかラドワンスカのペースに……

 リが第9ゲームを先にブレークした後の第10ゲーム、40−30から4本のセットポイントをつかみながら、あと1本が届かない。タイブレークもミニブレークをリードしながら5−3から連続4ポイントを許して第1セットを譲った。このセットだけで、ウイナーがラドワンスカの12に対しリは20。一方、アンフォーストエラーは7に対して19……ペースはまんまとラドワンスカに傾いた。

 2度あった雨の中断はさほど影響なかっただろう。事実上の決勝戦と見られた一戦だけに、両者の集中力は途切れなかった。ラドワンスカに体力的消耗は見えるのだが、最後までミスがなく、ファイナルセットにその差が出た。第1ゲーム、第5ゲームをブレークして5−1とリード。リは必死に食い下がり、第7、第8ゲームで計7本のマッチポイントを凌いたのはさすがだったが、力尽きた。計31ゲームを戦い、ラドワンスカのアンフォーストエラーがわずか18本(リは40本)……完璧な勝利と言っていいだろう。

 女子はベスト4が出そろい、ラドワンスカの次の相手は4回戦でセリーナを倒したサビーン・リシッキ(ドイツ)。またカーステン・フリプケンス(ベルギー)が第8シードのペトラ・クビトバ(チェコ)をフルセットの末に破り、グランドスラム初のベスト4に進んだ。こちらはマリオン・バルトリ(フランス)と決勝進出をかけて戦う。

<了>

文・武田薫
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