サッカルーズが崖っぷちで臨む日豪戦=世代交代失敗も日本の脅威となるのか

植松久隆

ケネディの先発は? 経験豊富で重厚な布陣

ケーヒル(左)、シュワルツァーとおなじみの顔ぶれが世代交代の遅れを感じさせるが、ベテランの経験は侮ることはできない 【写真は共同】

 4日の試合結果とその内容いかんでは、「電撃解任」という憂き目に遭う可能性も皆無ではないオジェックが、日本戦にどのように臨むのか。残りの“勝ち点勘定”を考えた時、果敢に勝ちにいくよりは、オジェック自ら評したところの「負けない戦い」が求められる。そのタスク実行にふさわしいという観点から先発メンバーを予想したい。

 ケネディの復帰で、前線の構成を予測するのが難しくなった。とはいえ、このタイミングで満を持して復帰させたケネディを出場させないことは考えにくく、最前線にケネディを置き、ケーヒルがその周りで攪乱(かくらん)するような縦の関係の2トップがファーストチョイスになる。左の開いた位置には、オジェック体制で安定して起用され続けるアレックス・ブロスケか、オランダのユトレヒトで今季大きな成長を見せた"キューウェル2世”の呼び声高いトーマス・オアー。右はドイツでコンスタントにプレーしてきた数少ない若手の成長株ロビー・クルース、アストン・ビラではこのところ出場機会に恵まれなかったものの代表実績で上回るブレット・ホルマンのいずれかが出場してくるだろう。

 中盤の底は、クリエーティブなベテランMFマルコ・ブレシア−ノと、所属のクリスタル・パレスのプレミア昇格で気分を良くしている長身のミル・ジェディナクの組み合わせが現時点のベスト。かつてジェフユナイテッド千葉でプレーし、日本をよく知るマーク・ミリガンや、先のオマーン戦でジェディナクとコンビを組んだジェームス・ホランドの可能性も捨てきれない。

 ディフェンスラインは、本職ではない左サイドバック(SB)で安定したプレーを見せるマット・マッケイ。右SBには順当ならばルーク・ウィルクシャー、ブリスベンでの前回の日豪戦で先発したジェイド・ノースの起用も選択肢の1つだ。センターバック(CB)はキャプテンのニールは決まりとして、そのパートナーには復帰即先発となる高さと経験のオグネノブスキが有力だ。これに不動の守護神シュワルツァーを加えた予想メンバーだが、経験豊富な重厚な布陣と評しても差し支えはないだろう。

黄金世代の“最後の奉公”となるのか

 この予想メンバー(2人名前を挙げた場合は、先の選手を先発と予想)で、30歳以下の選手はブロスケ(29)、ジェディナク(28)、クルース(24)とわずか3名。残りの選手は40歳のシュワルツァーを筆頭に軒並み30歳を超えるベテランぞろいで、はじき出された平均年齢は何と31.55歳。平均年齢の高さばかり気にせず、数値化されない彼らの経験を買うべきと頭では理解していても、やはりこの数値を見せられると、オジェック政権下の3年で失った時間の無言の重みをずっしりと感じずにはいられない。

 オーストラリア代表のここ10年余りを中心選手として支えてきたいわゆる“黄金世代”のベテランも、そろそろキャリアの黄昏時に入りつつある。そんな彼らが“最後のご奉公”とばかりにW杯本大会出場に向けて死力を尽くす――そんな見方をすれば、少しポジティブな気持ちで、いつもの顔ぶれの戦いを見守れるだろうか。

 今のオジェックは、選手起用やプレ―スタイルに関する批判などはどこ吹く風だろう。とにかく、彼自身の考えるベストの布陣で、日本戦に始まる6月シリーズ3連戦で「W杯出場」という結果だけを追い求める。その習性から後ろに進むことができないカンガルーの名を冠する手負いの“サッカルーズ”は、至上命題であるW杯出場権獲得のため、なりふり構わず、ゴリゴリのフィジカル・サッカーでぶつかってくる。

 彼らは知っている――日本がどんなサッカーを嫌がり、オーストラリアの何を恐れるか。日本は今のオーストラリアなら勝てると楽観していると、大きなしっぺ返しを受けることになりかねない。そのことだけは、忘れずにいたい。

<了>

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著者プロフィール

1974年福岡県生まれ。豪州ブリスベン在住。中高はボールをうまく足でコントロールできないなら手でというだけの理由でハンドボール部に所属。浪人で上京、草創期のJリーグや代表戦に足しげく通う。一所に落ち着けない20代を駆け抜け、30歳目前にして03年に豪州に渡る。豪州最大の邦字紙・日豪プレスで勤務、サッカー関連記事を担当。07年からはフリーランスとして活動する。日豪プレス連載の「日豪サッカー新時代」は、豪州サッカー愛好者にマニアックな支持を集め、好評を博している

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