日本代表入りへ、柴崎岳が描く成長曲線=飽くなき情熱でさらなる上昇を目指す

安藤隆人

違和感があったベストヤングプレーヤー賞

昨シーズンはベストヤングプレーヤー賞を受賞したが、満足するそぶりを全く見せなかった 【写真は共同】

 柴崎の行動一つひとつに意味がある。鹿島に入って、ルーキーイヤーで出番をつかみ、2年目の昨年はリーグ31試合に出場し、ヤマザキナビスコカップで最優秀選手賞を獲得。さらに昨年のJリーグアウォーズでベストヤングプレーヤー賞を受賞しても、そのスタイルは変わらない。

「僕自身もベストヤングプレーヤー賞の投票用紙を見て違和感がありました。他にも何人かが違和感があったでしょう。この賞に値する選手は、今年はゼロ人でした。世界的に見れば同世代には、ACミランのFW(ステファン・)エル・シャーラウィ、レアル・マドリーのDF(ラファエル・)バラーヌ、サントスのFWネイマール。彼らのような活躍ができた選手がいるかといえば、そうではありません。彼らに一歩でも近づき、日本を代表する選手になっていかなければ世界と戦えないと思います」

 これはベストヤングプレーヤー受賞後のスピーチだ。この言葉を見ても、彼はずっとぶれていないことが分かる。

現状に歯がゆさを感じている

 迎えた2013年。当然のように鹿島の中心選手としてプレーする柴崎だが、自らのプレーには全く納得していない。不動の地位は確保したが、果たして自分がチームに貢献できているのか、勝利に貢献できているのか。手ごたえをつかめていないのが現状だ。

 第9節の横浜F・マリノス戦。チームは先制するが、終了間際に同点ゴールを決められ、1−1のドローに終わった。この試合、彼は中盤から浮き球のパスをDFラインの裏に通し、チャンスは演出したものの、無難なプレーに終始した。第11節の浦和レッズ戦でも彼はミスなくプレーし、野沢拓也の先制点をアシストしたが、それ以降は横浜FM戦同様にインパクトあるプレーはできなかった。

「まだ全体の距離間が遠いし、自分も下がってボールを受けたり、前に持ち出せないこともある。ただプレーしている感がある」

 試合後の彼の表情は淡々としていたが、現状に歯がゆさを感じているように見えた。彼は今、内に湧き起っている情熱と向上心を表現することに苦心している。だが、こうした出来事はこれまでも頻繁に直面していることだ。厳しい環境を欲し、適応し、さらに厳しい環境を欲す。この繰り返しで成長してきた彼にとって、今はさらに成長しようとする過程にいる。

「常に自分より高いレベルの選手がいる環境に身を置きたい。“上には上がいる”ことを思い知らされたいんです。そうすることでさらに成長しようとできるから」

 その環境とはずばり日本代表だ。代表に入り、ハイレベルな環境の中でさらに自分を磨く。光を放ち続ける若き才能は、新たな局面を迎えようとしている。

「日本代表は周りが評価して入れるもの。今はしっかりと自分の課題に向き合いながら、成長できるようにやっていきたい」

 ぶれない姿勢に、飽くなき情熱と向上心。苦心しながらもそれを表現できる時を待ち、自己研さんを続ける。変わらぬこの姿勢がある限り、柴崎が日本代表に入るのは時間の問題だろう。早くその姿を見たいものだ。

<了>

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著者プロフィール

1978年2月9日生まれ、岐阜県出身。5年半勤めていた銀行を辞め単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は35を超える。2013年5月から2014年5月まで週刊少年ジャンプで『蹴ジャン!』を1年連載。2015年12月からNumberWebで『ユース教授のサッカージャーナル』を連載中。他多数媒体に寄稿し、全国の高校、大学で年10回近くの講演活動も行っている。本の著作・共同制作は12作、代表作は『走り続ける才能たち』(実業之日本社)、『15歳』、『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、『ムサシと武蔵』、『ドーハの歓喜』(4作とも徳間書店)。東海学生サッカーリーグ2部の名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター

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