小野伸二が豪州で達成した史上初の偉業=ACLで実現する“家族”との凱旋
参入初年度Vの偉業
入団当初は懐疑的な声も聞こえたが、小野はプレーで自身の才能を証明し、クラブのシンボルへと祭り上げられた 【写真:アフロ】
元々、オーストラリア国内有数のサッカー処と知られるウエスタン・シドニーにAリーグのクラブが無いことは、オーストラリアスポーツ界の“七不思議のひとつ”とも言われてきた。それゆえに、昨季終了後のゴールドコースト・ユナイテッドの消滅を受け、その後釜としてFFAが半ば強引に押し切ったWSWの新規参入は、成立に至る経緯はさておき、地元には大きな歓迎を持って迎えられた。
その成立を、無理に日本で例えるならば、それこそ「日本の名だたるサッカー処の静岡や埼玉にJクラブが無い」というような異常な状況がようやく解消されたわけで、地元が歓迎するのは当然のこと。おらが町のクラブを待ち望んでいたウエスタン・シドニーの多くの人々は、クラブ設立のその日から非常に熱いサポーターとなり、WSWが初年度から予想外の快進撃を果たす原動力となったのだ。
“Tensai”の証明
正直なところ、小野の入団が決まった当初はその活躍に懐疑的な声も聞かれてたが、日本の誇る“天才”は、その才能を周囲に認めさせるのに時間を必要としなかった。加入直後から、プレーの随所で見せるクオリティの高さは見るものをうならせ、ファンにもチームメートにも愛される人柄の小野は、すぐにクラブのシンボルへと祭り上げられた。
そんな小野のプレーは、目の肥えたサッカーメディアも魅了した。Aリーグを独占中継するFOXスポーツの名物コメンテーター、サイモン・ヒルは、どこからか仕入れてきた“Tensai”という表現をWSWの試合実況の際に多用する。小野という日本の至宝がAリーグのピッチで輝きを放つたびに、彼の“Tensai”の叫び声がオーストラリア中に響く。そうして、小野の存在は急速にサッカーファンに認知されていき、いつしか小野は、シドニーFCのアレッサンドロ・デルピエロと同等のスーパースターの座を確保するに至る。