阿部「浦和のサッカーだ」と言えるように=“ミスターレッズ”福田と語る今季の浦和

構成:ぴあ

阿部「自分たちを見失わないチームに」

優勝が期待される今季の浦和だが、阿部は「目の前の試合をしっかり戦っていきたい」と浮かれた様子はない 【撮影:鈴木俊介】

福田 去年と違って間違いなく今年は優勝を期待されていると思うけど、自分の中ではどういう位置づけかな? 去年は戦い方も模索しながらの1年だっただろうけど。まず、去年の成績をどう評価してる?

阿部 もうちょっとやれたかなとは思っています。

福田 順位的に?

阿部 サッカーの内容もそうです。

福田 過去のJリーグで3位になったチームを見ても、勝ち点55というのはかなり少ない。でも、3位で終われたことは、粘り強く勝ち点を拾っていけたということだと思うし、個人的には上出来だったのかなと思ってるんだけど。

阿部 その前のシーズンを考えたら良くなったと思います。

福田 阿部が戻ってきたおかげだよね。

阿部 それはないんじゃないですか。いや、そうしておきます(笑)。

福田 いや、冗談抜きで大きいよ。阿部だけじゃなく槙野(智章)も含めて、代表クラスの選手が後ろに入ってきて、安定感が増したこと、そして監督がやろうとしているサッカーを体現できる選手が入ってきたのは事実だから。シーズン序盤は、その目指すサッカーに近づくにはもう少し時間が掛かると思っていたから、そう考えるとかなりスムーズにできた印象がある。得失点の数字は決して良かった訳じゃないけど、うまく戦いながら勝ち点を拾っていけたと思う。去年は見ている人たちも“ここまでやれるんだ”という感じだったけど、今季はそういう目では見てくれないんじゃないかな。タイトルを意識して、みんな応援してくれると思うから、そういう部分で去年とは戦い方がだいぶ違うのかなと。

阿部 周囲の見る目や期待感は変わると思います。ただ、去年も目の前の一戦を戦うだけ、という気持ちでやってきました。今年はACLもあって試合数も多いですし、同じように目の前の試合をしっかり戦っていきたいと思います。自分たちを見失わずに、やってきたことが出せるようなチームにならなければいけないと思いますし、それをやっていければ結果もついてくると思っています。やるときはしっかりやって、過密日程になるとオンとオフの切り替えも大事だと思うので、しっかりやっていければ心配はいらないと思っています。

阿部「また見に来たいなと思ってもらえる試合を」

福田 外からの期待は強くなると思うし、去年よりも上の成績は残したいと思ってるよね?

阿部 現役をやっているうちは、1つでも上の順位を目指すのは誰もが思うことだし、それを実現するためにはどうしたら良いのかを考えながら、継続してやっていきたいです。サッカーの内容もそうですし、試合に対する気持ちもそうです。ぶれずにやっていきたいです。

福田 今の浦和は独特のスタイルだから、続けていきたいね。

阿部 相手の嫌がることというか、見ている人が“ここでこんなプレー?”と意外性を感じ取ることのできるサッカーだと思っています。自分たちも楽しんでやっていれば、見ている方も楽しんでもらえると思いますし、楽しんでやっていきたいと思います。

福田 プレーしてる選手がつまらなそうにプレーしていたら、見ている人もつまらないからね。それは重要なことだと思う。

阿部 そういう気持ちが表現されると思いますし、また見に来たいなと思ってもらえる試合をしたいです。“これが浦和のサッカーだ”とはっきり言えるようになったら良いと思います。

福田 それがないのが、浦和のスタイルだったからね(笑)。

阿部 去年からやっていることを続けていって、“これが浦和のサッカーだ”という風になれば。

福田 そういうものを作り上げていく作業は楽しいからね。壊すのは一瞬だし、作るのは時間が掛かる作業だけど。楽しむことも重要だけど、結果が出てこないとやりたいことをできなくなっていくから、去年と違って今年は、シビアに結果を求められると思う。

阿部 もちろん、結果を出していくのが求められているのは分かっていますし、勝っていくことで自信もついてきます。今は練習試合ですけど、それでも勝って終わらなければならないし、そういう雰囲気を作っていきたいと思っています。それは絶対試合に出てきますから。

福田 今シーズンも阿部に掛かる期待は大きいし、楽しみにしてるよ!

阿部 とにかく、自分たちが出せることをしっかり出して、一年間戦って行きたいと思います!

<了>

(取材:浦山利史/撮影:鈴木俊介)

阿部勇樹/YUKI ABE

今季のレッズについて熱く語り合った阿部(左)と福田 【撮影:鈴木俊介】

1981年生まれ。千葉県出身。ジェフユナイテッド市原ユースからトップチームに昇格を果たす。各年代の日本代表メンバーに名を連ね、2004年のアテネ五輪にキャプテンとして出場。2007年、浦和レッズに完全移籍。同年、ACLを制覇し、クラブワールドカップ2007に出場。大会3位に輝く立役者の1人となる。2010年にレスター・シティ(イングランド2部チャンピオンシップ)へ移籍。元イングランド代表エリクソン監督の下でプレーしたのち、2012年に浦和レッズに復帰。(写真左)

福田正博/MASAHIRO FUKUDA

1966年生まれ。神奈川県出身。中央大を経て、1989年に三菱重工サッカー部(現・浦和レッズ)に加入。95年のJリーグで50試合に出場し32ゴールを挙げ、日本人初のJリーグ得点王に輝く。“ミスターレッズ”と呼ばれ、サポーターから愛された。2002年の現役引退後、JFAアンバサダーに就任。2008年〜2010年に浦和のコーチを務め、2011年よりサッカー解説者として活動をしている。Jリーグ通算228試合93ゴール 日本代表45試合9得点 2006年・JFA公認S級コーチ取得。(写真右)

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