最下位から「這い上がれ」 中畑DeNA2年目の挑戦

村瀬秀信

中畑監督「近い将来の強いベイスターズの下地を作れる」

厳しい奄美大島での秋季キャンプを乗り越えた選手を「褒めたい」と語った中畑監督。来季への飛躍に手応えを感じた様子 【(C)YDB】

 そんな中、10月19日、20日と中畑監督が宮崎に視察に訪れる。19日は小杉が6回無失点に抑えるなど中日相手に完勝するも、20日の韓国LGツインズ戦では先発の加賀美が乱調で惨敗。試合後のベンチに現れると、選手たちに「カジ(梶谷)下を向くな!」「タケ(石川)、声を出せ!」「阿斗里、分かってんのか!」と選手ひとりひとりの名前を呼びながら鼓舞した。

「チャンスをものにするには今しかない。本物をつかめ。1日1日強い信念を持って過ごせ。強い身体と信念をつくり上げる以外にうちが浮上する目はないぞ! あっという間に終わっちゃうよ。昨日とこんなに極端に違う試合、見せてはいけない、やってはいけないんだ。分かったか!」

 その後を4勝2敗1分けで乗り越えたフェニックスリーグの最終結果は9勝6敗3分。参加16チーム中4位で終了すると、11月6日からは「這い上がれ」をキャッチフレーズに乗り込んだ奄美大島での秋季キャンプが開始。選抜された少数精鋭による2週間の野球地獄は、夜間外出を禁止し朝から夜遅くまで練習漬けの毎日。連日の走り込み、特守など地獄を地で行く猛練習が続いた。そんな中、昨年まで正捕手の一番近くにいながらも、今季1軍出場ゼロに終わった細山田武史は「『這い上がれ』というキャッチフレーズは、現在の自分にもピッタリの言葉。来季は絶対に巻き返したい」とたった1日の休日すら返上してトレーニングに励むなど、連日、目の色を変えて練習に打ち込む姿が印象的だった。

 泥と汗にまみれ、倒れても必死にボールに食らいつき、各々が限界まで身体をいじめ抜いた2週間。その充実度はすべてのメニューを消化した後に中畑監督が漏らした言葉に集約されていた。

「あれだけ厳しい内容のキャンプに、選手全員がよくついてきてくれた。このキャンプを乗り越えた今回参加した選手たちが、近い将来の強いDeNAベイスターズの下地を作れると確信した。選手たちを褒めてあげたい」

精神面での変貌も感じられた奄美キャンプ

 後にDeNAが浮上すれば、間違いなく分水嶺(れい)になるであろう今年の奄美キャンプ。選手たちの口から「問題はこのキャンプの後、春のキャンプまでをどう過ごすか」なんて言葉が聞こえてくるあたり、精神面での変貌も感じずにはいられない。

 オフに入り各選手がいる中、11月24日からは台湾で行われたアジア・ウインターベースボールリーグに小杉、佐藤、桑原、啓二朗の4選手が参加。オフ返上で野球と向き合った。
 12月10日のドミニカ戦に先発した小杉は7回を無四球1失点と好投したほか、先発した4試合を全勝。防御率1.25とチームの大黒柱としてフル回転し、22日の決勝戦には先発の大役を任されると、8回2死までノーヒットノーランの快投を見せ、決勝戦のMVPにも選ばれ、この秋の好調を引き続き持続させている。

 フェニックスから好調の佐藤祥万は、中継ぎとして13試合に登板。力のある球を投げ込み、12月16日の台湾戦では3者三振でセーブを挙げるなど、こちらも好調を維持。桑原は本職のショート、セカンドだけでなく、サードや外野でも出場。台湾との決勝戦では二塁打、三塁打を含む4打数2安打と勝利に貢献。大会通算3割3分3厘、連日安打を放つだけでなく、ユーティリティープレーヤーとしても存在感を示した。
 そして今シーズン1軍で1安打しかできなかった08年のドラフト1位、啓二朗は日本のクリーンアップを任されると、前半戦は打率4割を超える大活躍。途中、急性胃腸炎で体調を崩してから多少調子を落とすも通算3割3分3厘と攻守に存在感を見せた。多村仁の横浜復帰で「6番は取られないですよね」と関係者に漏らしていたほど危機感を募らせていた未完の大器の才能が開花するきっかけになるか。
 
「這い上がれ」を合言葉に今この時もなお、個人個人が来季の巻き返しを目指して練習に励んでいるこのオフ。来るべく2013年、勝負はもう始まっている。

<了>

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著者プロフィール

1975年8月29日生まれ、神奈川県茅ケ崎市出身。プロ野球とエンターテイメントをテーマにさまざまな雑誌へ寄稿。幼少の頃からの大洋・横浜ファン。

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