高橋大輔がつかんだ成功体験 SP首位からの精神コントロールで優勝=GPファイナル
「他の選手のことは考えない、自分の仕事に集中」
“課題”にぶつかりながらも、日本男子初の優勝を勝ち取った高橋(中央)。長光(左)、モロゾフ両コーチと、喜びを分かち合った 【坂本清】
「得点や順位じゃなく、今日は4回転を降りたということが良かったです。(SP)一番は予想してなかったので、明日はすごく緊張すると思う。このプレッシャーをどういう風に持っていけるか、良い経験にしたい。他の選手のことは考えずに、優勝のことも考えずに、僕の演技、自分の仕事をどこまでできるかに集中したい」
そして翌朝。公式練習では、試合ではまだ組み込まない4回転ルッツを練習するなど、孤高の精神状態を見せた。「試合の公式練習はベストコンディションなので、先を見据えての練習という意味です」とサラリと言ってのけるほど、落ち着いていた。
「緊張感に勝てなかった」それでもつかんだ優勝
「本当にすごい緊張感でした。(ファイナルで)久しぶりの最終6番滑走。でも自分が望む所に行きたいのなら、これはどこかでこないといけない経験」。そう誓うと、フリー本番の氷に降り立った。
冒頭の4回転は転倒。しかしそこで気落ちせず、2本目の4回転をクリーンに成功させた。その後も、今季やや調子を落としているトリプルアクセルの着氷が詰まり気味になるなど、小さなミスはあったが、最後のコレオシークエンスでは、スピード感と雄大さの溢れる、自信にみなぎった滑りを見せた。
「(4回転の)1本目で降りたと思ったらコケたり、まさかの2本目を降りられたり、トリプルアクセルで上がった瞬間にヤバイと思っても耐えたり……。でもそれ以外は不安なく、落ち着いてできました。結局は(フリー3位で)緊張感に勝てなかったけれど、緊張を受け入れることはできたかなって思います」
フリーは羽生に0.01点差の3位にとどまるも、総合269.40点で優勝。ノーミスの演技とまではいかなかったが、踏ん張りが優勝につながった。
「自分自身に勝つためには、周りを知ることは大事だが、知った上で周りに左右されずに自分を保つことが大事。自分の演技をしなければ、周りを気にしても勝てない。だからメンタルの持って行き方として、『自分の演技をする』という発言を繰り返して、自分をその状態に持っていこうとしたんです」
冷静に自己分析する高橋。この経験は1年2カ月後、この同じロシア・ソチの会場に戻って来た時、必ず成功体験として脳裏によみがえるはずだ。
<了>