元王者ライコネン、F1復帰後初優勝=可夢偉、波乱の展開を乗り切り6位入賞

吉田知弘

明暗分かれたベッテルとアロンソ

ランキング首位奪還を目指したアロンソ(赤)だったが、3ポイントしか差を縮めることはできず 【写真:ピレリ】

 白熱しているセバスチャン・ベッテル(レッドブル)vs.フェルナンド・アロンソ(フェラーリ)の年間チャンピオン争い。前回インドGPを終了した時点でベッテルが240ポイント、アロンソが227ポイント。その差わずか13ポイントと接戦の状態でアブダビGPにやってきたが、今回も両者“明暗の分かれる結果”となってしまった。

決勝のスタートグリッドを決める公式予選。両者ともQ3に進出してベッテルが3位、アロンソ7位という結果。ベッテルとしてはポールポジションこそ獲得できなかったが、アロンソより前のグリッドを獲得した。上々の予選となったが、数時間後に状況は一変した。予選後の車検で、ベッテルのマシンから検査で必要な燃料のサンプルを一定量確保できなかったため、予選タイムを抹消。3番手スタートが一転して最後尾スタートとなった。アロンソにとっては、逆転のチャンスが舞い込んだ。

 6番手からスタートしたアロンソは4位に浮上すると、周囲の混乱を尻目に冷静なレース運びを見せ、21周目に2位に浮上。トップを快走するライコネンの攻略にかかった。一方、ピットスタートを選択したベッテルは上位陣とは異なり、前半にミディアムタイヤを選択。後半にソフトタイヤを投入して追い上げにかかるつもりだったが、序盤に導入されたセーフティカー中に前を走るダニエル・リチャルド(トロ・ロッソ)が急に減速。追突を避けた際にコース脇のDRS(可変リアウイング)稼働ゾーンを示す看板に接触してフロントウイングを破損。12位まで追い上げたベッテルだったが、予定外のピットインで再び最後尾に回ってしまう。

 まさに不運続きの週末となってしまったベッテルだったが、それでもあきらめずに驚異の追い上げをみせた。すでにスタート時にミディアムタイヤを履いていたベッテルは予定外のピットインとなった13周目からソフトタイヤに交換。15周目にレースが再開すると、トップ集団と同じ1分47秒台のペースで周回し、前のマシンを次々とパス。37周目に2位まで上ったところで再びピットインし再度ソフトタイヤに交換。前を走る3位ジェンソン・バトン(マクラーレン)との差は20秒以上あったが、この直後に起きた多重クラッシュの影響で2度目のセーフティカーが導入され、その差は一気になくなった。このチャンスを逃さなかったベッテルはレース再開からバトンを猛追。残り3周で逆転に成功し、最後尾スタートから3位フィニッシュ。貴重な15ポイントを勝ち取った。

 一方のアロンソは最後までライコネンを攻略できず2位。ランキングを逆転するどころか、結局ベッテルとの差を3ポイントしか縮められなかった。これによりドライバーズランキングは1位のベッテルが255ポイント、2位のアロンソが245ポイント。接戦のまま次回アメリカGPへとチャンピオン争いは続いていく。

可夢偉、トラブルを抱えながら6位入賞

 日本GPでの3位表彰台以降は苦戦が続いている可夢偉。今回のアブダビGPでも金曜日のフリー走行からマシンバランスが決まらず、予選も16位と惨敗に終わってしまった。メルセデスAMGとのコンストラクターズランキング5位争いが白熱している中、なかなか結果が残せない可夢偉だったが、決勝では粘り強い走りでチャンスをつかんだ。

 スタート時の混乱をうまく切り抜けて8位に浮上。その後、僚友のセルジオ・ペレスに先行を許したが、最初に選択したソフトタイヤを丁寧に扱いながら周回を重ねた。25周目にピットに入ってミディアムタイヤに交換。後半スティントに挑んだ。実はこの時、可夢偉のマシンはクラッチとKERS(運動エネルギー回生システム)のトラブルを抱えており、ペースがなかなか上がらない状況。前のマシンを追い抜いていけるほど攻めることができない状態となったが、1分47秒台のペースを維持し粘り強く走行。これが最終的に上位入賞へとつながった。

 終盤には可夢偉の前を走るポール・ディ・レスタ(フォース・インディア)、セルジオ・ペレス(ザウバー)、ウェバー、ロメ・グロジャン(ロータス)が絡む多重クラッシュが発生。2度目のセーフティカーが導入され、可夢偉は一気にポジションを上げ6位に浮上。3戦ぶりのポイント獲得となった。

 レース後、可夢偉は「メルセデスAMGまであと12ポイント。残り2戦でなんとか巻き返したいです」とコメント。年間チャンピオン争いに注目が集まりがちだが、コンストラクターズでは、この2チームが接戦を繰り広げている。来年のシート獲得につなげるためにも、可夢偉には残り2戦でも結果が求められる。

<了>

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著者プロフィール

1984年生まれ。幼少の頃から父の影響でF1に興味を持ち、モータースポーツの魅力を1人でも多くの人に伝えるべく、大学卒業後から本格的に取材・執筆を開始。現在では国内のSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に年間20戦以上を現地で取材し、主にWebメディアにニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載。日本モータースポーツ記者会会員

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