“シドニーダービー”で相対した小野とデルピエロ=オーストラリアサッカーに刻んだ新たな歴史
千両役者の一振り
小野はリーグ最下位のチームについて「得点が入れば変わる」と前向きに語った 【Getty Images】
迎えた後半。攻めながら、なかなか点が入らないWSWを尻目に、シドニーFCが先制の好機をつかむ。後半7分、ゴール前でボールを受けたデルピエロがDFをかわしつつペナルティエリア内に侵入。DFの間をすり抜けようとしたところで倒され、PKを獲得。決まったかに見えたPKはまさかの蹴り直し。その二回目のPKを阻まれたデルピエロは、相手GKからの跳ね返りに鋭く反応、冷静にゴール右上に蹴り込んで先制。それまでの出来の悪さを一瞬で霧消させた千両役者の一振りが、そのまま決勝点となり、歴史的なダービー初戦の軍配はシドニーFCに上がった。
「点が入れば、チームも変わってくる」
試合後、取材陣の前に立った小野には、当然ながら満足した表情は見られない。チームの状態を「日を追うごとに連携は良くなっている」と評し、「270分、点が入らない現状は我慢のしどころだが、点が入ればチームも変わってくる」と前を向く。ダービー初戦に敗れたことに関しては、「こんなに多くのサポーターが駆けつけてくれたのに、がっかりさせてしまって、申し訳なく思っているし、反省している。次のアウエーできっちりと勝ち点を上げられるように頑張りたい」と噛みしめるようにコメントした。一方のデルピエロは、小野の囲み取材の間に引き揚げてしまい直接話を聞けなかったが、ピッチから戻ってくる際には満面の笑みを見せていたので、勝利と自らのゴールに満足していることは想像に難くない。
試合翌日、地元紙の紙面に踊ったのはゴールを決めて舌を大きく出して派手に喜ぶデルピエロの姿。試合後、現地紙の記者にデルピエロの感想を聞かれ、「一つ、一つのプレーは見る人を魅了してたと思うし、テクニックもさすがに優れているなと感じた」と淡々と感想を述べた小野だが、次こそは自分の力でチームをダービーでの勝利に導きたいという思いを秘めているはずだ。
次のダービーの翌朝、紙面に踊る小野の歓喜の姿を今から楽しみにしておきたい。