西野監督の下で急速な進歩を遂げる神戸=名将就任で開けてきた未来への展望

永田淳

はっきりとした変化を選手も実感

首位・仙台を相手にも堂々とした戦いぶりを披露。惜しくも敗れたが、明るい未来を十分に予感させるものだった 【写真:杉本哲大/アフロスポーツ】

 立て続けにケガ人が出た影響もあり、西野神戸の初戦となった第13節鹿島戦からナビスコカップの大宮戦、札幌戦では勝利を挙げられなかった。しかし第14節ジュビロ磐田戦で3ー1と初勝利を手にすると、そこから公式戦4連勝と結果を出した。過去のベースが生きていることを感じさせる戦いではあったが、少しずつ出てきたボールを大切にする意識や流れを変えるさい配が徐々に神戸を動かしていることも確かだった。

 西野監督就任から2カ月弱が経過した今、神戸にははっきりとした変化が見られるようになっている。それを一番実感しているのはほかでもない選手たちだ。「ガラっと変わった。監督がブレないことで、つなぐ意識が強くなってきた。そういう変化プラス、今までのハードワークを出しつつやれている」(大久保嘉人)、「サッカーの感じが変わった。ストレスが少なくなって、選択肢も増えた。怖がっている感じがなくなった」(橋本)、「僕自身もチーム全体もそうだけど、攻撃への意識は変わっている。少しずつ効果は出ていると思う」(北本)と、どのポジションの選手も充実感あふれる表情を見せる。

 試合に敗れはしたが、7日に首位のベガルタ仙台をホームに迎えた第17節では、好調の相手を前にしても恐れることなくボールを保持し、判断を変えながらゲームを組み立てる戦いを披露した。指揮官は「ポゼッションが高まったとしても、チャンスや決定機が増えないと意味がない」と勝ち点3を奪えなかったことを悔み、伊野波も「残り3分の1のエリアでの仕掛けはここから先の課題。鹿島もそうだったけど、相手にやらせても勝てること。それが今の仙台だと思うし、そういうチームが上の順位のチーム。そうなっていかなければいけない」と口にしたが、多くの人がこれまでの神戸とは違うと感じただろうサッカーがこの日のピッチにはあった。

歩み出した方向は間違っていない

 新指揮官就任で神戸が変わるということは多くの人が描いたことだったとは思うが、わずか2カ月弱で試合内容として示されるというのは予想以上だったのではないだろうか。西野監督は「著しくは変わっていない。しっかりディフェンスできるところはあって、そこから次のパフォーマンスにどう移っていくか。そのあたりの意識、力が付いてくれば『変わったな』と感じられるかもしれない」とまだまだ満足はしていないが、後半戦に向けて攻撃面の改善に着手できる状況は悪くない。監督交代からチームづくりまでの一連の流れは、これまでステップアップを狙いながらも停滞してきた印象の強い神戸にとってスムーズすぎると言えるほどだ。歩み出した方向は間違っていないと思えるだけに、今後どんな進化を遂げていくのかは非常に楽しみだ。

 最後に、西野監督から中心的役割を求められ、ゲームキャプテンも任されるようになった野沢のコメントを紹介しておきたい。

「今、神戸というチームが変わろうとしているのは外から見ていても分かると思う。もちろんまだまだだけど、西野さんに付いていっていることが連勝にもつながった。データの上ではディフェンスのハードワーク率は神戸が一番だし、ポゼッション率も毎試合上がっている。それはトレーニングが試合に生きているということ。今はすごく楽しい。より考えてサッカーをしなければいけなくなったことで、変わってきた。みんなで学んで、反省して、吸収して良くなっていきたい。チーム全体として個々の能力をもっと引き出すことができれば、素晴らしい結果が付いてくると思っている」

 こういった思いを抱いて選手がサッカーに取り組めているのが、現在の神戸である。

<了>

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著者プロフィール

1980年生まれ。愛知県出身。小学3年からサッカーを始め、主にDFやMFとしてプレー。法政大学卒業後、商社勤務を経てフリーライターに。現在はG大阪・神戸を中心に少年〜トップまでカテゴリーを問わず取材している。Goal.comのDeputyEditor、少年クラブ指導者としても活動している。日本サッカー協会B級ライセンス保持。

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