西野監督の下で急速な進歩を遂げる神戸=名将就任で開けてきた未来への展望
大きかった名将の存在
西野監督(右)の就任で神戸は確実に進化を遂げている 【写真:杉本哲大/アフロスポーツ】
今季の神戸は、野沢拓也、田代有三、伊野波雅彦、橋本英郎、高木和道といった日本代表経験のある選手を獲得し、大きな飛躍が期待されてスタートしたにも関わらず、すぐに期待に応えることができなかった。リーグでは開幕からガンバ大阪、コンサドーレ札幌に連勝して周囲をにぎわせたが、3月20日のヤマザキナビスコカップ予選の鹿島アントラーズ戦から公式戦6連敗。その間一度もゴールを奪えないという危機的状況に陥った。リーグ第7節柏レイソル戦で連敗ストップはできたものの、続く横浜F・マリノス戦で再び敗戦。4月末にクラブは和田昌裕監督の解任を発表し、安達亮ヘッドコーチを監督代行に据えた。
安達ヘッドコーチが指揮を執った間、神戸は大宮アルディージャ、セレッソ大阪に連勝するなど一度は息を吹き返した。しかし、本当の意味でチームが動き出したのは、5月19日に発表された西野朗監督就任からだった。昨季まで10シーズンにわたってG大阪を率い、クラブワールドカップ(W杯)の舞台にも立った名将の存在は、神戸でも変わることなく大きかった。
代名詞を捨てなかったのは大正解だった
モチベーションがアップしたところに、これまでの戦いをリスペクトしたチームづくりの方針が示されたことで、歯車がうまく回り始めた。西野監督は、新たなチームを率いるにあたり、「これまでの神戸の良さである堅守速攻を生かして戦いたい」と宣言した。西野監督といえば「ポゼッション」のイメージが強いが、最初からG大阪で築いたサッカーをすることを考えるのではなく、神戸の現状をしっかりと把握した上で、内容と結果を両立できる戦いを考えた。
「ハイプレスからのショートカウンター」という武器は神戸の代名詞とも言えるもので、それを捨てなかったのは大正解だった。「僕らには戻るところがある」(北本久仁衛)と言える強みを残しながら、「カウンターができなかった時にどうするか。その時のオプションを増やすために、ボールを大事にすることも考えなければいけない」とした方針が、奏功した。
ただ、出足からスムーズだったわけではなかった。「自分の中でチームを持っていきやすいやり方でやる」という言葉通り、新指揮官がG大阪時代と同様の練習メニューを取り入れたことで、G大阪と神戸の違いが明らかとなった。G大阪では当然のようにつながっていたパスが、驚くほどつながらなかった。例えば、4対2の鳥かごで6本ボールをつないでから、縦パスやサイドチェンジを入れて崩していくメニューでは、まず鳥かごでのパスが6本つながらない。G大阪でプレーしていた高木和道や橋本英郎がその違いに「ここまでつながらんのか」と驚くほどで、これまでの「歴史」の違いを感じさせるスタートとなった。