逆風を乗り越えてロンドンを目指す日本代表=ビーチバレー
タイプの違う女子代表2チーム
テンポの速い攻撃で勝負をかける浦田(中央)・西堀(右)組 【岩本勝暁】
今シーズンからブラジル人の専属コーチを雇い、「身長の低い私たちは、オープン攻撃を基本にするのではなく、常に動きのある攻撃を仕掛け、高いブロックに引っかけるようにして攻撃の確率を上げることを目標に取り組んできた」(浦田)。ビーチバレーでは最も難しい技術を言われている、オーバーハンドのバックトス、ジャンプトスをマスターし、ブロッカーの意表を突く攻撃を仕掛けていく。浦田・西堀組の今シーズンのワールドツアーでの勝率は上がっており、完成度が高まってきているテンポの速い攻撃で勝負をかける。
一方の田中・溝江組は、ブロッカーの位置取りが難しいネット中央の位置に高いトスを上げ、そこから強打を打ち抜いていくというシンプルな攻撃を磨いてきた。
「その攻撃を維持するためには、基本のパス、トスの精度を落とさないこと。ここ1点という大事な場面でこそ、シンプルな部分を突き詰めていきたい」と田中は言う。昨年のワールドツアーにおいて田中・溝江組は、中国に勝利するなど価値ある一勝を収めた実績もある。
タイプの違う2チームが挑む国対抗戦。それぞれのチームの持ち味を最大限に生かすことが勝利のカギを握る。
白鳥・朝日組の課題
白鳥・朝日組が強豪国の高さを攻略するために取り組んできたのは、ネットからトスを離した高めのトスを打ち切っていく攻撃だ。「ボールの通過点を高くして、コースの幅を広く保った状態でレシーバーのいないところに思いっきり打ち込んでいく」(朝日)。
特に攻撃の的を絞られやすいサイドアウト時ほど、決定率を高めなければいけない。風が吹く不安定な状況でも、ネットとの距離、ボールの落下点を見極め、なおかつブロッカーを視野に入れて体をコントロールする高度なスキルが必要となってくる。
朝日のケガ明けで挑んだワールドツアーグランドスラム・ロシア大会では、今大会のライバルとなるオーストラリアから勝利を挙げた。白鳥は、「お互い大陸予選をにらんで、最初は手の内を探っていたけれど、合宿でやってきたことを発揮できたし、すべての力を出さなくても勝てた」と確かなる手ごたえをつかんだ。
もう一組は、急きょペアを組むことになった青木・日高組。この2人は10年にペアを組んだ実績があるとはいえ、練習不足は否めず急造チームには変わりない。国対抗戦のカギとなる総力戦という意味では、厳しい状況を強いられそうだ。
今大会で1位になれば、文句なしでロンドン五輪の出場権を獲得。2位、3位になった場合は、6月27日からロシア・モスクワで開催が予定されている世界最終予選にまわり、4位以下のチームは五輪出場の可能性が消滅する。
前回は男女ともに五輪出場を果たしたビーチバレー。女子においては、アトランタ五輪から4大会続いている連続出場を守り抜くことができるだろうか。
「先輩方がつないできた五輪出場。絶対に途切れさせるわけにはいかない。私たちにはその使命がある」(浦田)。
ビーチバレー日本代表のロンドン五輪出場をかけた最後の戦いが、20日から始まる。
<了>
BeachVolleyballPhotoBook 〜2009〜2012 時代を築いてきた者たち〜
『BeachVolleyballPhotoBook 〜2009〜2012 時代を築いてきた者たち〜』表紙 【写真/ビーチバレースタイル】