五輪も独壇場か? アフリカ勢の過酷な代表争いと日本に残された可能性=マラソン
勢いを増すエチオピア勢
東京マラソンで集団から飛び出した藤原新。曲がり角の多いロンドンのコースに適している!? 【坂本清】
エチオピアもまず選考候補選手が選ばれ、その中からナショナル・チームのコーチ陣が練習具合を見て、6月に最終的にチームが決定すると言う。エチオピアからの情報源によれば、代表候補入りが確実視されているのは男子はドバイで1位のアエレ・アブシェロと同2位ディノ・セファー、女子では同大会で優勝したアセレフェチ・メルギアとロッテルダムで優勝したティキ・ゲラナの4人。
一方、ドバイで3位だったマーコス・ジェネティは代表権を確実にするために、ロンドンマラソンでさらに記録を伸ばそうと考えた。しかし、エチオピア陸連からストップがかかり、ジェネティは欠場を余儀なくされている。
日本人選手向きなロンドン五輪のコース
男子ではアフリカ勢に対抗できる選手は見当たらない。しかしながら、歴史をひも解けば五輪の男子マラソンでは本命が勝ったことはほとんどないのも事実だ。
一方の女子では、ラドクリフにつぐ歴代2位のリリア・ショブホワ(ロシア)が優勝候補の一人なので、アフリカ勢のメダル独占はないだろう。現に金メダル争いはショブホワ対ケイタニーと言われている。
また、伏兵が優勝をかっさらった例もある。例えば北京五輪では誰も優勝候補に挙げていなかったコンスタンティナ・ディタ(当時コンスタンティナ・トメスク=ルーマニア)がレース半ばで先頭集団を抜け出し、レース後半までけん制しあう後続集団から逃げ切った。
今回、ロンドン五輪のマラソンコースは90カ所にも及ぶ曲がり角があり、また直線が短い箇所もあるので、レース中集団から逃げるのに絶好のコースなのである。つまり、伏兵が優勝する可能性がかなり高いコースと言える。
日本人選手の可能性を考えると、東京マラソンで飛び出した藤原新(東京陸協)も、大阪国際女子マラソンで飛び出した重友梨佐(天満屋)もその伏兵になりうる選手である。11−12年の統合リスト(一国3人まで)では重友は11位、藤原は16位である。トメスクも07−08年統合リストで13位だった。ゆえに日本選手にメダルの可能性がないわけではない。
それだけではない。コースは様々な路面からなり、短いが急坂もあるので、スピードランナーよりクロスカントリー選手向きのコースとも言える。それが、昨年世界クロカン5位のムタイが勝てるコースと言われる所以(ゆえん)である。ちなみに07年世界クロカンでモソップは2位に入っており、クロカンが得意と言える。
また、史上最強で最速のマラソンランナーであるラドクリフは、04年のアテネ五輪で絶対本命だったが、気候とアテネの難コースに阻まれて途中棄権に追い込まれた。08年北京五輪にはけがの影響で思うような練習ができず、23位に終わった。彼女は1996年から4回五輪に出場しているが、一度もメダルに届いていない。今回は最後のチャンス、その五輪は地元英国で行われる。応援しているファンも多いはずだ。
過酷な争いを経て、各国の代表として五輪に出場する選手たち。果たして、ロンドンの地では、どのようなレースが展開されるのだろうか。
<了>