松井大輔、ディジョンで陥った予想外の苦境=困難を乗り越え、もう一花咲かせることはできるか
カクタの加入でさらに狭まる枠
1月からチェルシーからカクタ(青)が期限付き移籍で加入。ライバルが増え、ポジション争いはし烈を極める 【Getty Images】
長い交渉の末、ディジョンは1月にチェルシー所属のプレーメーカー、ガエル・カクタを6カ月の期限付きで獲得した。並外れた技術とパス能力を誇り、16歳でチェルシーに引き抜かれたこの20歳のフランス・ユース代表選手は、通常トップ下だが、サイドもできる。彼もチェルシーでプレーチャンスを得られず、ここ2年ほどレンタルでイングランドを巡っていたのだが、開花を目指してディジョン移籍を決意。初試合ではFKからゴールも決めていた。
故障で試合勘が再び鈍り、さらに新選手が加わったとなれば、チャンスを得るのはいっそう難しくなる。松井がレギア・ワルシャワ行きを考慮したのも、それがあってのことだろう。松井と話し合いの場を持ったカルトロン監督は、基本的に移籍に同意した。相変わらず穏やかな口調ながら、シーズン前と比べ、その言葉のトーンは変わっていた。
「いま、ディジョンではプレー時間がない。冬の市場で新しい選手も獲り、彼のプレーチャンスがさらに減少するので、よそに行きたいなら行かせることにした。松井、彼の代理人と1月に話し合いの機会を持ち、そう決めた。何がいけなかったか? 彼はピッチ上でわたしの期待に応えなかった」
能力をジャッジできるほどのプレーチャンスを与えていない、と言いたい気にもなるが、サンテティエンヌ時代のルセイ監督と違い、カルトロン監督はそう理不尽なタイプではない。思うに監督にとっての決定打は、おそらく故障による長い不在だった。故障は不運であり、本人次第ではないが、故障をしないことも能力のひとつ、と言う者もいる。「確かに故障は不運だった。でも監督、チームが必要としているときに応えられるよう準備を整えるのが選手の務めだ」と監督は言い添えた。
すべては本人の気持ちと実力次第
レギアにはグルノーブルで松井のチームメイトだったダニエル・リュボヤがいるのだが、彼の負担が大きいため、クラブはリュボヤの代わりに出場できるFWか、彼にアシストを提供できる選手を探していた。ところが松井が参加したキャンプ中にリュボヤが故障し、これでFW獲得が最優先に。松井を獲ると財政的にもうひとり獲得することができないため、「実現は困難」と地元紙は報じていた(しかし実際にはFWすら獲らずに終わっている)。
このポーランドへの移籍話消滅が、残念なことか、そうでないかは神のみぞ知ることだ。松井は連続的にプレーしてこそ調子を上げていくタイプ。プレーできるクラブですぐにピッチに飛び出していくことが、復活への最短距離という見方もある。しかし困難に挑戦するのもまた道のひとつ。残ると決まったのであれば、松井には、ここディジョンで一発奮起し、状況を覆してもらうしかない。監督は、「新選手も入ったので、競争は非常に厳しいものになるだろう」と前置きした上で、またこうも言っていた。「もしわれわれのもとに残ると決まったら、もちろん彼の頑張り次第でチャンスはある。松井はほかの皆と同様に、彼のチャンスを擁している」
ちなみに控えウインガーのコルニョー、サイドもできるアタッカーのマンダンヌ、若い攻撃的MFジュフロは、この冬に下部クラブへ期限付き移籍した。カクタが入ったとはいえ、その分ポジションがかぶる選手が数人抜けている。「もう30歳だから……」が最近の松井の口癖だが、30歳を過ぎても活躍している選手は大勢おり、すべては本人の気持ちと実力次第。ネバーギブアップの精神で、もう一花咲かせてほしいと願うのである。
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