ボルトン移籍の宮市に膨らむ期待=先輩ウィルシャーの成功に続けるか

平床大輔

アーセナルにとってオイシイ移籍

ウィルシャー(右)はボルトンへの期限付き移籍を機に飛躍を遂げた。宮市(中央)も後に続けるか 【写真:Action Images/アフロ】

 宮市という選手にスポットを当ててみると、アーセナルにとっては、経験値の先買いというメリットに加え、イングランド国内のクラブへの移籍であれば、先シーズンより導入された“ホーム・グロウン”制度のステータスが継続される利点がある。これは、登録選手の一定数を、地元育ちの選手としなければならないと定めたものであり、ホーム・グロウンとは21歳の誕生日までに3シーズン、あるいは36カ月間を英国内のクラブで過ごした選手と定義されている。現在19歳の宮市は、このまま21歳まで英国でのキャリアを継続すれば、ホーム・グロウンの肩書きを手に入れることができるのである。

 この冬、宮市にイングランド国外への移籍話が持ち上がった際、ベンゲル監督はこの制度のため移籍は英国内に限定すると明言している。経験値が積める上にホーム・グロウン条件の維持と、宮市のボルトン移籍はアーセナルにとって二度オイシイのである。

 当の宮市にとってこの移籍はどうだろうか。ボルトンはプレミアリーグ第23節終了時で17位と残留争いの水際に位置している。このタフな状況で、冬場の移籍でやってくる選手は、クラブやファンから、即戦力の助っ人として期待度の設定値が通常の3割増である。ましてや、ボルトンは近年、ウィルシャーやスタリッジと冬場の移籍で成功を収めてきているだけに、ファンも二度あることは三度あると、その鼻息は荒いに違いない。この残留争いという苦境と、期待値の高さは宮市がフットボーラーとして成長する上ではもってこいの土壌であると言える。赤の他人である筆者がこのようなことを述べるのは気が引けるのだが、若いうちの苦労は買ってでもしろ、と言うでしょう。

レギュラー奪取の可能性は十分にある

 コイル監督との相性は問題なさそうだ。ベンゲル監督が実践するフットボールと同形のゲームを信奉する監督であるだけに、トレーニングや戦術面で宮市が違和感を感じることはないだろう。ポジションはどうだろう。彼の主戦場である左サイドのウイングはペトロフがスタメンを張ることが多い。このいかつい顔をしたブルガリア人は、その風ぼうの通り、腕の確かな職人的プレイヤーであり、ポジションを奪うのは容易ではないだろうが、33歳のペトロフには年齢的なハンディがあり、コンディション面で宮市に分があれば一気にスタメン起用も考えられる。また、右サイドにコンバートされた場合はクリス・イーグルスが競争相手となるが、イーグルスは安定性に欠けるきらいがあり、宮市にもチャンスは十分ある。

 さて、その渦中のボルトンは2月1日にいきなりアーセナルと対戦した(結果は0−0の引き分け)。移籍契約の関係上、宮市の出場はかなわなかったが、今後5カ月を過ごすホームスタジアムで、ボルトンの一員として将来の自分を投影すべきクラブであるアーセナルとの対戦を目の当たりにできたのだから、これは幸先の良い話である。それも、レジェンドのアンリと練習を共にするという経験を積んだ矢先に。持っているなあ、宮市君。何はともあれ宮市亮、勝負の冬が始まるにつけ、二度あることは三度あると、祈る気持ちでそう呟く日本のおじさんなのである。ちなみに、背番号は30だそうです。

<了>

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著者プロフィール

1976年生まれ。東京都出身。雑文家。1990年代の多くを「サッカー不毛の地」米国で過ごすも、94年のワールドカップ・米国大会でサッカーと邂逅(かいこう)。以降、徹頭徹尾、視聴者・観戦者の立場を貫いてきたが、2008年ペン(キーボード)をとる。現在はJ SPORTSにプレミアリーグ関連のコラムを寄稿

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