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井川はなぜ“NYの球史に残る失敗”なのか
ヤンキースとの契約最終年を迎えて

老舗紙が「消え去った選手」として特集

今季の井川はヤンキースの3Aと2Aを行き来している。写真は2Aトレントン・サンダーのもの
今季の井川はヤンキースの3Aと2Aを行き来している。写真は2Aトレントン・サンダーのもの【写真は共同】

 7月も下旬になって、アメリカ国内で久々に「ケイ・イガワ」の名前が話題に上った。老舗『ニューヨーク・タイムズ』紙が、「消え去ったヤンキース選手」と題した井川慶のストーリーを掲載したのだ。

 巻頭から3ページにおよぶ長い記事は、手厳しい指摘も随所にちりばめられた赤裸々なもの。ブライアン・キャッシュマンGMの「獲得は完全に失敗だった」という発言、日本球団とのトレードを井川本人が拒否した事実、マイナー降格後もマンハッタンに住み続けていることなど、興味深いエピソードが満載されていた。


 2006年のオフにヤンキースが大金を叩いて獲得(入札金額2600万ドル+年俸総額2000万ドル)した井川も、今季がついに5年契約の最終年。アメリカでのキャリアをひとまず総括すべき時期が来たということなのだろう。

 ここまでのメジャー通算成績は2勝4敗、防御率6.66。3年目以降は一度もメジャー昇格の声がかかることなく、2Aと3A間の行き来を余儀なくされた。そんな足跡をたどれば、成否は誰の目にも明らか。いわゆる「Spectacular Failure(壮大なる失敗作)」として、井川は残念な形でニューヨークの野球史に名を残してしまうことになりそうである。

結果を残せずマイナーで飼い殺し状態に

「実はまだ日本にいた05、06年からチェンジアップが良くなかった。そのままアメリカに来ても、やはりまともには使えないままでした。チェンジアップの浮き球は日本人はけっこうミスしてくれるんだけど、こちらの選手には良い確率で持っていかれてしまう。去年くらいから(チェンジアップは)まあまあ良くなったんだけど、スランプを脱するのに5年かかったかなという感じですね」


 7月下旬に現在所属するトレントン・サンダー(ヤンキースの2A組織)を訪れた際、「残念に思っている部分は?」と問うと、井川は淡々とそう答えた。

 実際に井川がメジャーの投手として、まるで話にならないレベルであったとは思わない。3Aでは08年に14勝6敗、09年に10勝8敗。ヤンキースの3Aスクラントンの球団史上最多勝記録保持者でもある。それでも本人の言葉通り、決め球のチェンジアップが大事な場面で浮く傾向にあり、ハイレベルのアメリカンリーグ東地区で安定した結果は残せなかった。

 

 そして常勝が義務づけられたチーム内で即戦力になれないと判断されると、以降は完全に飼い殺しにされた。

 マイナーにいる間はヤンキースの総年俸として換算されない井川の年俸が、メジャーに上がるか、トレードに絡むとペイロールに含まれてしまう。そうなるとチームは余計な課徴金(いわゆる贅沢税)を支払わなければならなくなる。

 キャッシュマンGMは表向きには否定しているが、マイナーで結果を残してもチャンスすら与えられなかった理由の1つにそういった事情があったのは間違いないだろう。期待外れだった井川を放出しても交換要員に好選手は期待できないだけに、トレードのメリットもヤンキース側にはない。さまざまな状況を考えれば、井川がマイナーに縛り付けられたのもやむを得なかった。

杉浦大介
杉浦大介

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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