ヤクルトの快進撃を支える宮本慎也のリーダー哲学
組織を支えるためには「軸がぶれない」ことが重要
時に厳しく、時に優しく。宮本の存在がヤクルトの快進撃を支えている 【写真:江藤大作】
古田(敦也/元ヤクルト)さんが会長をやられていたときにストライキがあったりして、その後の会長候補はみんな「イヤだ。やりたくない」と言ったんですよ。ボクもやりたくないですけど、「それじゃあ、決まんねえな」って。「じゃあ、やろう」と。
――会長として希望枠の撤廃などを粘り強く交渉。球界を動かしました。リーダーを担うときのポリシーは?
100人が100人、「宮本が正しい」と言うとは思っていません。それを気にしていたら、ああいう仕事はできない。悪く言われることもあるだろうし……。でも、軸がぶれなければいい、と。
――その軸とは何ですか?
その場、その場で起きたことを、ちゃんと現実的に受け止めようと思っています。そりゃ落ち込むこともあるし喜ぶこともある。でも逃げないことですね。
若い選手へのアドバイス「言い訳をしない」
ウソをついたり後づけの理由を話す。そういうことがすっごい嫌いなんです。自分の失敗を恥ずかしいと思う人は(器が)小さいんですよ。みんなミスはするもの。だから隠さなくていいじゃないか、と思います。
――打てなかったり勝てなかったとき、「実はけがをしていたので」など、選手が言い訳をしないで、潔くミスを認めるということですね?
良いピッチングをして勝ったら取材を受けるのに、負けたら言い訳をしたり「きょうは何もありません」とかわす。そういう選手は嫌いですね。
――マイナスの状況下でも選手が自分の言葉で話すと、ファンには思いが伝わる気がします。
だから若い選手には言っていますよ。「自分がダメな時ほどしゃべろ」と。「新聞記者だって、本当は聞きたくないんだよ」と。負けてボコボコに打たれたとき、聞きに行きたくないでしょ? 記者さんも。でも仕事だから聞きにいかなアカンのやし……。ボクは結果が悪いときでもしゃべるようにしているんですよね。憶測で書かれるより自分の言葉で、と思うんで。
――いまやベテラン。耳が痛い質問や忠告でも聞けますか?
聞く耳は持つようにしています。大学の監督さんが、言い訳が大嫌いで「男らしくない」と。でも、ボクも最初の頃は怒られたときに「いや」「でも」とか言い訳ばかりしていた。
――言い訳をしなくなった理由は?
監督さんが「たとえその時に逃げても、反省をしないからまた同じ失敗をする」と。「そこで認めるから、“ああ、これは悪いんだな”と反省して、しないようにする。だからそういうミスが2度となくなる」と言われたんです。そのときに「ハッ」と思った。だから「変わろう」と思ったんです。
<了>