宇佐美貴史「バロンドールを目指していきたい」=バイエルン・ミュンヘン移籍会見

永田淳

チャンスに懸けてみたいと思い、移籍を決めた

バイエルンへの移籍が決まり、会見に臨んだ宇佐美。「バロンドールを目指していきたい」と自身の夢を語った 【永田淳】

金森社長 皆さんこんにちは。お忙しい中、ご参集いただきましてありがとうございます。日ごろはG大阪を取り立てていただいて、心より御礼申し上げます。今日の宇佐美選手の記者会見、わたしの中では来年の今ごろにやる予定だったんですが、1年早まることになりました。あんまりやりたくないんですが(笑)。

 わたしは2008年にG大阪に来たのですが、その時にユースの試合を見にいくと、育成部門の責任者が「10番で出ているのが宇佐美です。将来楽しみですよ」というように言うわけです。忘れもしない4月11日のことでした。わたしが初めて彼を見た印象は、華奢(きゃしゃ)というか、骨が細くて脚も細い。あんなにやせていて大丈夫かなと思いました。当時高校1年生でしたが、同じ高校生の中でやっている中でも、それほど頑丈な印象を受けませんでした。わたしは来年の6〜7月に記者会見をと考えていたんですが、今見ても、筋肉ががっしりしているという感じではないんですよね。だから、もう1年、西野監督のもとで勉強して、先輩の遠藤選手、明神選手、加地選手らにいろいろなことを教えてもらってから旅立つというのが、G大阪の社長として描いていた夢なわけです。

 ただ、今年も世界で若い日本人、もう欧州に数十名が行って活躍しているわけですけど、ほかの選手の活躍を見て奮起したのだと思います。そういう気持ちはやはり重要だと思いますので、クラブ側としては気持ち良く送り出そうと思ったわけです。おそらく、彼は欧州、ドイツの地で活躍して存在感を示し、自己実現をしていくと思います。
 ただ、彼はまだ20歳にもなっていない青年ですので、一言、これだけは忘れてくれるなということがあります。わたしはサッカー界に入って、いろんな長老の方々とも打ち合わせをしてきましたが、感謝の気持ちのない人間に対しては、誰も大切にしようとしないという言葉を聞いてきました。だから、彼には感謝の気持ちを忘れないでもらいたい。ドイツのクラブで活躍して、ヒーローになっていくかと思いますが、G大阪であと1年成長する姿を見たかったサポーターとか、監督とか、ほかの選手たち、今まで育ててくれた家族とか師匠、親、社会、こうした人々への感謝の気持ちを忘れたら、彼はおそらく、100以上の力を発揮できるところを、70%ぐらいで終わってしまうでしょう。この気持ちは19歳の青年にはなかなか分かりにくいと思います。われわれのように数十年生きて、やっと分かるわけです。そんな言葉を彼に伝えたいと思います。

 彼の経歴については皆さんよくご存じだと思います。京都府長岡京の出身です。中学生になる05年にG大阪のジュニアユースに入りました。その前から注目を浴びていました。08年、高校1年でユースに入って(※実際には前年の中学3年生時からユースでプレー)、高校2年になる09年にトップチームに昇格し、活躍してきました。わたしが忘れられないのは、彼がJリーグで初めて得点したシーンです。非常に印象的でした。監督と目が合って、抱き合ったことも含めて。そして昨年、Jリーグのヤングプレーヤー賞を受賞しました。クラブの経営をしていて、これほど晴れがましいことはありません。うちの選手が獲ってくれたことは本当にうれしい。そういう意味では、親孝行者だと思います。ヤングプレーヤー賞を獲ってくれたのはG大阪では初めてだったのですが、彼はこれから多くの賞をもらうと思いますので、日本の皆さん方も、メディアの皆さん方も、彼を応援してやってください。もし、彼が生意気なことを言うようであれば、構いませんから、注意をしたり、しかったりすることをしてくれると、われわれ一緒にやってきた仲間としてうれしく思います。


宇佐美 シーズン途中に抜けるということで、自分自身すごく悩んだのですが、こんなに大きなチャンスはないと思いますし、このチャンスに懸けてみたい、ここで大きなチャレンジをしてもいいんじゃないかなと思い、移籍を決めました。

自分でも想像できないぐらいの成長をしていきたい

──バイエルンの印象と、ポジション的に重なるロッベンやリベリーといったトップクラスの選手に勝っていく自信があるかどうかについて聞かせてほしい

宇佐美 バイエルンの印象としては、本当に世界のトップクラスのチームですし、各ポジションに世界のトップの選手たちがいる印象です。レベルの高い、そしてドイツの人たちからもすごく愛されているチームだと思います。ロッベンやリベリーという選手とのポジション争いは過酷やと思いますけど、そういう世界のトップの選手たちに囲まれながら練習をすることで学ぶことも多いと思いますし、そういう環境に入って自分自身を磨きたいという思いもあります。自分が今現在、ロッベンやリベリーに勝てるとは思っていないですけど、向上心を持って成長して、ポジションを奪っていけるように力を付けていければいいなと思っています。

──日本代表合宿の際に、「本田圭佑に刺激を受けた」ということだったが、今回の移籍も本田の影響は大きかったか?

宇佐美 特に……。その前から海外に対する気持ちはありましたし、本田選手の言うこととかに刺激を受けたということはないです。

──以前は「生涯ガンバ」と言っていたこともあったかと思う。どの段階で海外への思いが強くなったのか?

宇佐美 自分自身がもっと成長しないといけないというのを、試合に出ながら毎試合感じていました。よりレベルの高いリーグで、そういう選手たちの中でプレーして、自分でも想像できないぐらいの成長をしていきたいという思いが、強くなってきたということがありました。

──今回、バイエルン以外の他クラブからもオファーがあったと思うが、その中であえてバイエルンを選んだ理由を教えてほしい。またこの1年をどう過ごしたいかというイメージがあれば教えてほしい

宇佐美 最初、バイエルンはポジション争いが難しいだろうし、簡単に試合に出られるチームではないので、そういう意味ではステップアップというか、試合に出られる可能性が高いチームに行くということも選択肢にはありました。でも、ビッグクラブでプレーするということが目標だったので、そういうクラブからオファーをもらって、ステップアップしなくても、行きたいなという気持ちはありました。以前からすごく興味を持ってくれていたのは分かっていたので、そういうこともあり、バイエルンに決めました。

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著者プロフィール

1980年生まれ。愛知県出身。小学3年からサッカーを始め、主にDFやMFとしてプレー。法政大学卒業後、商社勤務を経てフリーライターに。現在はG大阪・神戸を中心に少年〜トップまでカテゴリーを問わず取材している。Goal.comのDeputyEditor、少年クラブ指導者としても活動している。日本サッカー協会B級ライセンス保持。

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