ドルトムントの強さの秘密=熱血指揮官と若き選手たちの優勝への道

ミムラユウスケ

優れたモチベーターである指揮官

クロップ監督(左)の情熱が、選手のモチベーションにつながっている 【写真:ロイター/アフロ】

 そして、最後に挙げるべきはモチベーターとしての監督の資質だろう。今シーズンのチームの中で最も成長したと言われるのが、ボランチのスベン・ベンダーだ。3月には念願のドイツ代表デビューも飾り、「今ではブンデスリーガを代表する選手の1人となった」とラインハルト・ラウバル会長は賛辞を送る。「彼の守備での貢献はものすごいから。絶対に外せない選手だよ」と香川も絶賛するほどだ。ベンダー本人は、自身が大きく成長を遂げたのは監督の情熱のおかげだと感謝している。

「僕たちは皆、ものすごく成長したと思う。もちろん、ここまで成長できたのは監督のおかげだ。彼の情熱的なところは試合の中だけではなくて、トレーニング中にも表れているんだ。だから、僕らは監督についていこうと思えるし、監督の期待に応えようと頑張れるんだ」

 例えば香川は、日本でのリハビリを終えてドルトムントに戻って来た時、監督の熱烈な歓迎を受けたという。
「『本当に、よく戻ってきてくれた。“とても、とても、とても”会いたかった』って言われました(笑)」

“過剰”とも言えるまでの情熱が選手に伝わり、選手たちはサッカーに対して真摯(しんし)に取り組む。ドルトムントには熱が渦巻いているのだ。

来季への課題

 今季は圧倒的な強さを見せつけてマイスターシャーレ(優勝皿)を手にしたドルトムントだが、来季に向けての不安要素はある。チームで最多のボールタッチ数を誇り、攻撃の起点となっているシャヒンの移籍だ。若い選手たちの中でもリーダー格であるシャヒンは今オフ、レアル・マドリーへ移籍することが決まった。代わりにニュルンベルクから若手の有望株イルカイ・ギュンドガンを獲得することが内定しているが、それでシャヒンの穴が埋まるかは未知数である。

 バルセロナに例えるならば、シャヒンはシャビのような存在だ。チームに欠くことのできない選手である。彼がいなくなったら、果たして今季のような戦いを続けることができるかどうか。

「若いドルトムントは未来のあるチーム」「ドルトムントの優勝はセンセーショナルなものであっても、決して運に恵まれたからではない」――そんな言葉がドイツメディアをにぎわしている。だが、来季以降も賛辞通りの戦いを見せられるかは不透明だ。ドルトムントの本当の価値が決まるのは、来シーズン以降の戦いにかかっているのかもしれない。

<了>

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著者プロフィール

金子達仁氏のホームページで募集されていた、ドイツW杯の開幕前と大会期間中にヨーロッパをキャンピングカーで周る旅の運転手に応募し、合格。帰国後に金子氏・戸塚啓氏・木崎伸也氏が取り組んだ「敗因と」(光文社刊)の制作の手伝いのかたわら、2006年ライターとして活動をスタートした。そして2009年より再びドイツへ。Twitter ID:yusukeMimura

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