横綱・日大三を倒す! 明徳義塾が練る「正攻法」と「秘策」=第83回選抜高校野球・直前リポート

寺下友徳

四国の雄、明徳義塾。初戦で優勝候補の日大三と対峙する。写真は、今大会屈指の好打者・4番の北川倫太郎 【寺下友徳】

 はじめに、今回の大震災で尊い命を亡くされた方々にお悔やみを申し上げると同時に、いまだ被災地や避難場所などで不自由な生活を強いられている皆様に心からお見舞いを申し上げます。このような状況の中で選抜は開催されることに決しましたが、まずは「高校野球」の意義をわれわれが常に心と頭に留め、さまざまな方法で伝えていくことが、大会スローガン「がんばろう! 日本」の本質につながってくるのではないかと筆者は思います。

 想いを形にするため。「頑張る」ことはとても難しいことですが、今こそみんなで自分たちのできることを頑張りましょう。

「横綱」に対峙する明徳義塾高の「正攻法」

エース左腕の尾松義生。本番へ向け、調子は上々だ 【寺下友徳】

 2002年夏の全国制覇に代表されるように、過去に様々な名勝負を演じてきた明徳義塾高(高知)。また、チームを率いる馬淵史郎監督は甲子園通算36勝19敗の実績と同時に、これまで甲子園に出場した春9回、夏11回の全てで初戦勝利をあげてきた名将として知られている。

 ただしそんな四国の雄も今大会ばかりは下馬評が低い。大会3日目第1試合に予定されている初戦の相手は昨秋の明治神宮大会を制覇し、今大会も優勝候補筆頭としてあげられる日大三高(東京)であり、相手エース吉永健太朗のような最速145キロ超を投ずる右腕も現在の四国地域には存在しないため、バーチャルな速球もこれまで体感できていない。指揮官がよくたとえ話にする大相撲でいえば「横綱に対峙(たいじ)する前頭筆頭」のような構図なのだ。

コーチの評価も高い、2年生捕手の杉原賢吾 【寺下友徳】

 それでも彼らはまずは正攻法で横綱に立ち向かおうとしている。その筆頭格は今大会でも屈指の好打者として数えられる4番の北川倫太郎(3年)である。一部では長距離砲としての評価が高い彼であるが、「右中間をライナーで抜いて、伸びればホームランになる打球が理想」と本人も語るように、本来の姿は中距離ヒッター。済美(愛媛)との間で行われた練習試合初戦では「タイミングが合っていない。バットが出てこない」と終始浮かない顔を見せていた彼だが、昨夏の甲子園2回戦で島袋洋奨(興南高)の肩口を強烈なライナーで抜いた「たたく力」が戻ってくれば、吉永のような速球派でも難なく打ち崩せる能力を十分有している。

 そのほかにも明徳義塾高には「ボールの切れ、回転は冬を越えて良くなった」とストレート強化の成果を語るエース左腕の尾松義生(3年)、「上級生にもしっかり言えるし、上級生も雰囲気を作ってくれるキャラクターをしている。彼がいなかったら昨夏も甲子園は難しかった」と佐藤洋コーチも高い評価を与える捕手の杉原賢吾(2年)などのタレントが多数健在。四国大会を圧倒的な力で制した彼らの「正攻法」は、この時点で横綱相手にも決して侮れないレベルにまで達している。

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著者プロフィール

1971年、福井県生まれの東京都東村山市育ち。國學院久我山高→亜細亜大と進学した学生時代は「応援道」に没頭し、就職後は種々雑多な職歴を経験。2004年からは本格的に執筆活動を開始し、07年2月からは関東から愛媛県松山市に居を移し四国のスポーツを追及する。高校野球関連では「野球太郎」、「ホームラン」を中心に寄稿。

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