リーグ1のサスペンス

 ほぼすべてのヨーロッパのリーグ戦で、優勝の可能性のあるチームは3つ以下に絞られている。ところが、フランスは5つのチームが5月にチャンピオンになる可能性を残している。リヨンがタイトルを独占した時代が終わり、昨シーズン優勝のマルセイユも盤石ではない。誰もがチャンスのある状況になっている。

 イングランドではチェルシーが後退。マンチェスター・ユナイテッドが優勝候補であり、アーセナルがライバルだ。3位のマンチェスター・シティは首位から10ポイントも離されており、優勝の可能性は低いだろう。スペインではバルセロナとレアル・マドリーのマッチレースが続いている。水曜日の試合でバルセロナに敗れた3位のバレンシアは、首位から20ポイントも差をつけられている。5位エスパニョルとは31ポイント。優勝はバルセロナかレアル・マドリーのどちらかである。

 ナポリは前週末、ミランに追いつくチャンスを逃し、直接対決に敗れてしまった。首位ミランとの差は6ポイント。まだ逆転は可能だが、少し苦しくなってきた。2位はインテルで5ポイント差。4位はラツィオだが、ミランとは10ポイントも離されており、優勝は苦しいと言わざるを得ない。ミュンヘンでバイエルンに3−1と勝利したドルトムントに対しては、もはや優勝を疑う者もいなくなった。2位のバイヤー・レバークーゼンとの差は第24節を終えて12ポイント。独走態勢に入っている。

 オランダではPSVに挑戦できるのは2位のトゥエンテと3位アヤックスのみだろう。ポルトガルではFCポルトがベンフィカに8ポイントの差をつけている。3位スポルティング・リスボンは実に首位と26ポイントも離れていて、完全に圏外に置かれた。ヨーロッパのリーグ戦において、ブックメーカーの仕事はほとんどなくなってきたわけだ。しかし、唯一残っているリーグがある。フランスのリーグ1だ。

 25試合を消化して、リール、レンヌ、マルセイユ、パリ・サンジェルマン(PSG)、リヨンの5チームが4ポイントの差でひしめいている。首位と8ポイント差の6位モンペリエでも、まだチャンスがないとは言えない。では、どこに賭けるべきか。その前に各チームの状況を見てみよう。
1位 リール:46ポイント
 開幕以来、最も良いプレーをしているチームだ。ヨーロッパリーグ(EL)は決勝トーナメント1回戦でPSVに負けたが、選手層の薄いリールはあえて、Bチームをアイントホーフェンに送っていた。リーグ戦に専念するしかないのだ。アディル・ラミを中心として守備陣は才能に溢れていて、中盤にはベルギー人のエデン・アザールがいる。ジェルビーニョとデ・メロのFW陣も好調だ。ただ、ホームのピッチがあまりにも悪化しており、これは大きな問題としてのしかかっている。カップ戦のベスト4に残っているので、けが人や選手の消耗も気になるところだ。

2位 レンヌ:46ポイント
 レンヌは今季の驚きだ。かつてガンバ大阪でも指揮を執ったフレデリック・アントネッティ監督が率いるのは、若くて経験の浅いチームだが、リーグ戦にすべてを集中している。MFのヤン・エムビラ、GKニコラ・ドゥシェーは今季ブレークした選手である。ここ数年、レンヌは定評のあるアカデミー出身の選手で固めてきたが、リーズナブルな補強に成功して優勝戦線に残っている。

3位 マルセイユ:45ポイント
 攻撃のタレントには不足のないマルセイユだが、ディディエ・デシャン監督は有効な戦術を確立できていない。ロイク・レミーは右ウイングで起用され、アンドレ=ピエール・ジニャックは信頼を勝ち取れていない。現在のところ、攻撃のベストプレーヤーはアンドレ・アユーになっている。才能あるルチョ・ゴンサレスもゲームを変えることができていない。しかし、マルセイユはチャンピオンズリーグ(CL)に残っているし、リーグ1でもまだチャンスが十分にある。

4位 PSG:44ポイント
 PSGのパフォーマンスは良い驚きだった。リールと並ぶ魅力的なプレーをしている。ベストプレーヤーはブラジル人のネネ。特筆すべきは15年も続いた冬場の落ち込みが今季はないことだろう。しかし、ELも国内カップ戦も残っている上、ステファン・セセニョンを冬のマーケットでサンダーランドに売ってしまった。若手が急速に台頭しない限り、才気不足は否めない。また、ホームで勝ち切れないのも大きな問題で、これらを総合すると優勝するにはまだ力不足の感がある。

5位 リヨン:42ポイント
 最悪のスタートを切ったが、立ち直った。しかし、クロード・ピュエル監督はパズルを完成できていない。リサンドロ、バストス、グルクフ、ピャニッチといったタレントをまとめ切れていないのだ。CLでの消耗もリーグ戦に響いている。だが、リヨンは終盤の争いには慣れている。もし彼らが優勝できなかったとしても、少なくともプレッシャーのせいではない。

 さて、5強の直接対決はそれぞれ3試合を残している。マルセイユだけは4試合あるので、それがどう影響するか。次節はホームでリールと対戦、その次はアウエーでレンヌ。この2試合が今後の状況を左右しそうだ。リールは最後の2試合がタフ。アウエーのPSG戦とホームのレンヌ戦を残している。もし、このまま状況が変わらなければ、最終節はリールとレンヌの優勝を懸けた一騎打ちとなる。

<了>
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著者プロフィール

1965年10月20日生まれ。1992年よりスポーツジャーナリズムの世界に入り、主に記者としてフランスの雑誌やインターネットサイトに寄稿している。フランスのサイト『www.sporever.fr』と『www.football365.fr』の編集長も務める。98年フランスワールドカップ中には、イスラエルのラジオ番組『ラジオ99』に携わった。イタリア・セリエA専門誌『Il Guerin Sportivo』をはじめ、海外の雑誌にも数多く寄稿。97年より『ストライカー』、『サッカーダイジェスト』、『サッカー批評』、『Number』といった日本の雑誌にも執筆している。ボクシングへの造詣も深い。携帯版スポーツナビでも連載中

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