試合巧者のトヨタ自動車が3度目の優勝=第37回社会人野球日本選手権大会総括

島尻譲

ことしから1回戦のみ地方開催

浦添商高時代から注目の右腕だった沖縄電力の伊波は実力を発揮できなかった 【島尻譲】

 ことしから日本選手権は1回戦に限り京セラドーム大阪で開催されず、地域の活性化に加えて、レベルの高い社会人野球の試合を多くのファンに観戦する機会を増やしたいという目的で、日立市民球場、岡崎市民球場、わかさスタジアム京都、倉敷マスカットスタジアムと地方分散開催となった。それは、京セラドーム大阪球場使用料や各チームの大阪滞在費などの諸経費を抑えたいという側面もあった。試行錯誤でよりいい社会人野球運営を推し進めているという部分は高く評価できるが、リニューアル元年ということもあり課題も生まれた。以下、箇条書きになるが、一部のアマチュア野球ファンの声である。

・全国大会の1回戦なのに地区予選の雰囲気がぬぐい切れない
・他球場での試合経過・結果などのアナウンスがなかった
・1回戦と2回戦の間(約1週間)が空きすぎ
・他大会(明治神宮大会など)と日程が重なっている
・いつの間にか始まって、いつの間にか終わっている大会の感が否めない

スター不在と近畿勢の不振

 また、仕方がないが、ことしはアジア競技会の日程とも重なる不運があった。それによって横浜1位の須田幸太(JFE東日本)らドラフト指名選手や主力選手を欠くチームもあり、戦力ダウンはもちろんのこと、スター不在で観客動員にも影響した面もある。
 スター不在という観点は試合展開なども関係しただろうが、来ドラフト解禁となる注目選手が目立たなかった。特に高校時代から有望投手と目されていた大塚椋司(聖望学園高→JX−ENEOS)は1回無失点だったものの球威不足、伊波翔悟(浦添商高→沖縄電力)は3分の1回・1失点と大きなアピールはできなかった。来春からの猛スパートに期待したい。
 観客動員という部分では、これも勝負事なので仕方がないのだが、近畿勢の不振も痛かった。今大会、近畿はパナソニック、大阪ガス、新日鉄広畑、日本新薬の4チームが出場したが、1回戦突破は日本新薬の1チームのみ。都市対抗総括の際(下記関連リンク参照)など、これまでにも再三、触れたことながら近畿地区の競争力低下は客観的に明らか。日本選手権予選では近畿地区という括りではあるが、チーム数が減少した中での基本的な阪和・兵庫・京滋奈という細分化された地区割りが近年の著しい弱体化に繋がっていることはもう否定できないだろう。日本選手権運営のリニューアルにも着手したのだから、ここでも早急な改革が必要かと思われる。

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著者プロフィール

 1973年生まれ。東京都出身。立教高−関西学院大。高校、大学では野球部に所属した。卒業後、サラリーマン、野球評論家・金村義明氏のマネージャーを経て、スポーツライターに転身。また、「J SPORTS」の全日本大学野球選手権の解説を務め、著書に『ベースボールアゲイン』(長崎出版)がある。

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