ビーチバレー、西堀健実の挑戦

“プロ”としての新たな一歩

今季からペアを組む浦田聖子(右)とともに、開幕戦で初優勝を果たした 【坂本清】

 2年後のロンドン五輪出場という目標に向かって、自分の足で歩き始めた西堀。「自分でやり始めたら、いろいろなことが分かってきた」と、プロのアスリートとしての存在意義を初めて痛感したという。

「自分に投資してくれる会社を見つけるために、何社も断られましたし、簡単なことじゃないんだと分かりました。現時点では、ありがたいことにお金を出していただけるご縁が見つかりましたが、自分が勝たないとその方たちも離れていってしまう。だからこそ結果を出さないといけないという気持ちが今までよりも強くなりました。逆に、結果を出すことができたら、断られたところも振り向いてくれるかもしれない。『お金は出せないけど、物品なら提供できます』というお話を聞くと、まだまだ実力が足りないんだなと思うし、全部、自分に返ってくるんですよ」

 それまでは、うまくいかないことがあれば、「何かのせい」にしていればよかった。しかし、今はすべてが自分次第──。自分の道は、自分で切り開くしかない。そんな未体験ゾーンを手探りで通り抜け、逞しくなった表れなのか、シーズン開幕前には『確かなる自信』をのぞかせるようになっていた。

「こうやって一人立ちするようになって挑む今シーズンは、なんだかやれるような気がしています。不安もありますけど、その不安さえも上回る気持ちがあるんですよ! まずはツアーで優勝します。目には見えないけど、できる感覚がある」

 これまでの自分に足りなかったものを見つけた西堀は、その言葉どおり、5月1日から5月3日に開催された『JBVツアー2010第1戦東京オープン』で優勝。試合終了後のインタビューで西堀は開口一番に言った。
「ここまでくるのに、本当に長かったです。有言実行することができました」

「五輪は、行かないといけない場所」

「ロンドン五輪がラストチャンス」と話す西堀(左)。夢を実現するために、パートナーの浦田とともに、ひたすら前へと進んでいく 【坂本清】

 浦田・西堀ペアは、その後のJBVツアーでも、第2戦大日本印章オープンで準優勝、第3戦大阪カップは3位と、すべての大会でベスト4入りを果たし、国内チームの中で安定感は群を抜いている。もちろん、戦いはまだ始まったばかり。2年後に迫るロンドン五輪に向けて、『FIVBワールドツアー』のポイントを蓄積し、ワールドランキングを上げていくことは必須だ。

「私自身は、ロンドン五輪がラストチャンス。ロンドンに行くのは、当たり前だと思っています。五輪は行かないといけない場所だから。それを達成するために、今はやるべきことがたくさんある。今年はいろいろなことに挑戦できる年だと思うので、トライしていきたいと思います」

 2012年の夏、果たして有言実行なるか。五輪という国民の誰もが注目する舞台で活躍する日がくれば、日本中に『にしぼりたけみ』の名は、瞬く間に広がるはずである。

<了>
◇プロフィール◇
西堀健実/Takemi Nishibori
1981年8月20日、長野県生まれ。小学校からバレーボールを始め、長野市立裾花中、古川商高(現・古川学園)で主力メンバーとして全国制覇を果たす。99年には、第30回春の高校バレー、インターハイ、国民体育大会で優勝し三冠を成し遂げた。卒業後の2000年にはJTマーヴェラス(現V・プレミアリーグ)に入団するも、03年に退団しビーチバレーへ転向。当初は妹の育実とペアを組んでいたが、のちに解消し、05年8月から北京五輪出場を目指すため、浅尾美和とペアを結成した。09年11月には、4年半にもわたる浅尾とのペアを解消し、10年1月から浦田聖子とペアを結成。ロンドン五輪出場を目指している。

◇西堀選手出場予定の大会◇
大会名:ビーチバレージャパン女子
日程:8月13日(金)〜15日(日)
会場:神奈川県藤沢市 鵠沼海岸

ビーチバレースタイル7月号 『水着SHOW〜2010SUMMER〜』

『ビーチバレースタイル』7月号表紙 【写真/ビーチバレースタイル】

 6月25日発売号の特集は、浦田聖子、西堀健実、浅尾美和、草野歩、田中姿子、溝江明香、尾崎睦、金田洋世、駒田順子、周藤玲美ら、トップ選手10人の戦闘ウエアを一挙公開。選手たちが着用する『水着』へのこだわりとは!? 第2特集は、JBVツアー前半戦ハイライト。明暗分かれた開幕戦をもう一度おさらい。これを読めば、各チームの浮き沈みがまるわかり! そのほか、好評連載中の技術指導企画、フィジカルトレーニング論なども掲載。

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著者プロフィール

ビーチバレースタイル/2009年4月創刊。国内トップ選手の情報、大会レポート、技術指導、トレーニング論など、ビーチバレーを「見る」「やる」両方の視点から、役立つ情報が満載。雑誌のほかに、ビーチバレースタイルオンラインとして、WEBサイトでも大会速報、大会レポートなど、ビーチバレーに関する報道を行っている。

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