オランダ対ブラジルの大一番を前に=中田徹の「南アフリカ通信」

中田徹

真夜中からすでに大盛り上がり

ブラジルとの大一番を前に、オランダ人のサポーターは深夜から盛り上がっている(写真はイメージ) 【Getty Images】

 眠れないよぅ……。
 時計を見たら真夜中の2時22分。オランダ人のサポーターが「Staan op als je voor Holland bent♪」(オランダを応援しているなら立ち上がれ!)と歌い出した。
 そして今は4時15分。さっきまでは『WAKA WAKA ワカワカ』(今大会の公式テーマソング)の大合唱で、誰かが盛り上がっていた。しかもブブゼラ付きで。これはたまらん。

 ここはオランダ対ブラジルの大一番を目前にしたポートエリザベス。FIFA(国際サッカー連盟)が急きょチケットの追加販売を決めたカードである。
 いやな予感は空港のツーリストインフォメーションであった。少なからずの人数のサポーターたちが目の色を変えてコンピューターの前に座り、必死になって宿を探しているようだったのだ。相当、宿を見つけるのが難しいのだろう。ともかく僕は、情報を集めるだけ集めると、タクシーを手配して涼しい顔でツーリストインフォメーションを去り、ホテルにチェックインした。

 悪い予感は、ホテルについて一度はすぐに消えた。ホテルそのものはヨーロッパの格安ホテルチェーン系の味もそっけもないものだが、そのロケーションがビーチの真ん前という最高のものだったのだ。僕は茅ヶ崎生まれの三浦半島育ちだから、こういう環境に非常に弱く、「ワーオ!」と喜んでいた。
 ところが今は、かつて三浦半島を席巻した伝説の暴走族「横須賀ピエロ」の爆音に悩まされた、あの夏の夜を思い出している。南米のアウエーチームのホテルの周りもこんな感じなのかもしれない。ホントに眠れない。

 ちょうどホテルの前にはガソリンスタンドがある。外国のガソリンスタンドはコンビニを兼ねているから、格好のたまり場だ。そこへ宿にあぶれたサポーターや、地元のビーチボーイズが集まって、前夜祭を始めてしまったようなのだ。これもまたワールドカップの余興だと僕は苦笑するしかない。

 オランダ対ブラジルは12時間後の午後4時から。真夜中からこんなに盛り上がっているんだから、すごい雰囲気になるだろう。今から楽しみだ。
 でも、眠れないよぅ……。

<了>
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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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