皆川と佐々木、悪条件に消えた日本アルペンの悲願
大舞台には似つかわしくないコース
今回はレース以外の部分で話題となることが多かった皆川賢太郎。シーズン前半のスランプを脱しきれず、五輪の舞台でも彼本来の滑りができなかった 【田草川嘉雄】
日本からは、佐々木明(エムシ)と皆川賢太郎(竹村総合設備)の二人が出場した。ともに今季のワールドカップでは苦しい戦いが続いていたが、佐々木は1月半ばから徐々に調子をあげてカナダ入り。一方の皆川はなかなか本来の滑りを取り戻すことができず、不安を抱えてのスタートとなった。レースの4日前に行なわれた記者会見でも、「目標はあくまでも金メダル。そこだけはぶれずに行きたい」と強気を崩さなかった佐々木に対して、皆川は、「今回はメダルとの距離は離れているかもしれないが、とにかくこのコースで自分のベストを出し切りたい」と慎重な発言に終始していた。
明暗分かれた1本目
1本目大健闘の14位につけ、さらに上位をめざして勝負に出た佐々木明。しかし、中間付近で致命的なミスを犯し、合計タイムでは18位に終わった 【田草川嘉雄】
皆川のスタート順は39番。コースはすでに相当に荒れていたが、あえてギャンブルに出た。このスタート順からは普通に滑っても好タイムは望めない。リスクを背負ってでも冒険する以外に、上位進出は望めなかったからだ。この選択は決して間違いではなかっただろう。しかし、賭けは凶と出た。スタート直後、ヘアピンを抜けた後の細かいリズムの旗門構成に対応できずコースアウト。わずか10秒足らずで、皆川賢太郎の五輪は終わった。
皆川は本来、ギャンブルに出るタイプのレーサーではない。厳しい練習を積み重ね、自分の理想とする滑りをしっかりと作り上げ磨き上げてからレースに臨む。そして本番では、少し安全のマージンを残しつつ理想の滑りを『表現する』のが、皆川のスラロームだったはずだ。しかし、今回はそれができなかった。理想の滑りをするにはスタート順が遅すぎたし、そもそも彼自身が求めるレベルまでには仕上がっていなかったのではないか。選択は間違っていなかった。しかし、それしか選択の余地がなかったことに、今回の皆川の苦しさが透けて見える。
2本目もアタックに出た佐々木
優勝は、イタリアのジュリアーノ・ラッツォーリ。1本目のリードを守り切り、アルベルト・トンバ以来、イタリア男子に22年ぶりのアルペン金メダルをもたらした 【田草川嘉雄】
「結果には満足していないが、周囲に支えられてここまで来れたことには、納得している」
皆川が4位に入りメダルまでもうあとわずかまで迫ったトリノ五輪から4年。けがやスランプに悩まされながら、再びめぐってきた五輪の大舞台は、それぞれに複雑な思いを残して終了した。佐々木はソチ五輪への意欲を語り、皆川は現時点では去就を明らかにしていない。だが、旅はまだ続く。トリノ後の日々を詳細に検証し、次の4年につなげる努力を、今、日本のアルペン界は求められているといえるだろう。
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