初出場で初優勝飾った大垣日大=第40回明治神宮大会・高校の部総括

松倉雄太

神戸国際大付・岡本、開星・白根ら好投手そろう

 一二三や帝京高の投手陣と並んで今大会注目された右腕が神戸国際大付高(近畿地区・兵庫)の岡本健(2年)と開星高(中国地区・島根)の白根尚貴(1年)の2人。最速144キロの速球を誇る岡本は近畿大会後に体調を崩し、初戦の今治西高戦では5回でマウンドを降板したが、無失点と好投。代わって1年生左腕の大川賢人が大きな経験を積んだ。青木尚龍監督はこの大川に大きな期待を寄せており、全国という舞台で1球の怖さ、次に同じ場面を迎えた時にどう攻めるかを学んだはずだ。
 白根は準々決勝の今治西高戦、2対2で迎えた7回につかまった。野々村直通監督が「ことしは白根がいるから」と語るほど全幅の信頼を寄せているだけに、最速147キロの本格派右腕が直球勝負にこだわって痛打されたことを今後にどう生かせるか。
 九州大会初出場初優勝で神宮に乗り込んできた嘉手納高(九州地区・沖縄)。堅い守備が自慢だったが、初戦の大垣日大高戦で6失策と崩れて6対7と敗れた。ほとんどの選手が初めて体験する首都・東京の空気と、神宮の人工芝に戸惑っていた面は否めない。それでも終盤の追い上げが強烈なインパクトを残した。
 ほかにも1回戦で投げ合った高岡商高(北信越地区・富山)の鍋田浩成(2年)と秋田商高(東北地区・秋田)の片岡元気(もとき・2年)、さらにフォークが武器の北照高(北海道)・又野知弥(2年)ら来春の選抜大会が楽しみな投手が多かったのが今大会の特徴だ。

負けて学ぶ重要性

 昨年の大会を振り返ると、初戦敗退だった清峰高(長崎)と中京大中京高(愛知)が春夏の甲子園を制し、神宮大会出場の意義を感じさせた。その反面、優勝した慶応高(神奈川)は選抜初戦敗退、夏は県大会3回戦で姿を消した。決勝で6失策をしても勝ってしまったため、優勝候補と言われたプレッシャーも大きく、課題を克服しきれなかった。
 そんな目線であらためて見てみると、今大会でも地区大会から勝ち続けてきたチームに、高くなった鼻をへし折りたいという監督の意図が見えたチームがいくつかあった。高校野球では夏の大会を最終目標にチームをつくっていく。新チームが結成されて約3カ月のこの時期、貴重な全国大会という舞台で『負け』から学ぶものは大きい。課題が見えても勝っていると記憶が気迫になる危険もはらむ。負けてもいいということではなく、負けたという事実と課題を糧として最終目標の夏に悔いを残さないためにどう取り組むか。試合をやる以上は勝ちを目指しながらも、勝つことだけがすべてではない。今大会に出場した10校が来春、そして夏にどんな答えを出すか。注目していきたい。

<了>

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著者プロフィール

 1980年12月5日生まれ。小学校時代はリトルリーグでプレーしていたが、中学時代からは野球観戦に没頭。極端な言い方をすれば、野球を観戦するためならば、どこへでも行ってしまう。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『ホームラン』などに寄稿している。また、2005年からはABCテレビ『速報甲子園への道』のリサーチャーとしても活動中。

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