イブラヒモビッチ“巨人はいかに融合したか”

豊福晋

イブラヒモビッチがバルセロナにもたらした高さ

イブラヒモビッチ(9)はバルセロナに「高さ」という武器をもたらした 【Getty Images】

 エトーとの比較も、イブラヒモビッチがバルセロナに着いてから毎日のように投げかけられたテーマだった。多くの評論家がエトー離脱によるマイナス面を指摘し、中にはイブラヒモビッチの獲得をクラブの失策とする者もいた。
「エトーとの比較に関しては何ともいえない。彼とはプレースタイルが全く異なるから」 そのたびにイブラヒモビッチはこう答えている。

 エトーの持ち味は、相手最終ライン裏へダイアゴナル(斜め)に抜けていく絶対的なスピードにあった。一方、イブラヒモビッチがバルセロナに新たにもたらしたもの、それは前線の“重み”だ。
 昨季のバルセロナが最も苦しんだ試合。それはCL準決勝のチェルシーとの第2戦だった。チェルシーの選手たちは極端に自陣に引き、ほぼパーフェクトにピッチ上のスペースを消していた。
「あれだけ引かれては普段どおりのサッカーをするのは難しい」
 イニエスタの得点で最終的にはバルセロナが決勝へと駒を進めたが、グアルディオラ監督はチェルシーとの戦いをこう振り返っている。

 どうしても得点が必要だったこの試合の最後の数分間、グアルディオラはセンターバックのピケをセンターFWへと置いている。昨季のバルセロナには、スペースがない中でも放り込めば決めてくれるような、そんな屈強なストライカーがいなかったからだ。
 1発勝負となるCLの決勝トーナメント以降、極端に引いてくる相手をどう崩すのか。それは単純な放り込みに対する強さの必要性を認識させられた試合でもあった。

新たな武器を手に、バルセロナは昨季の再現に挑む

 エトーからイブラヒモビッチへ――。今季、前線にイブラヒモビッチが加わったことで、チームは新たな攻め方を得ることになる。
 9月22日、リーガ第4節、ラシン・サンタンデール戦。前半20分の1点目はそれを象徴するものだった。右サイドから上がったメッシのファーサイドへのクロスを、イブラヒモビッチが頭で押し込んだシーンだ。
 イブラヒモビッチの前でクリアしようと跳んだのは、身長187センチのDFエンリケ。しかしイブラヒモビッチはその後方からエンリケにぶつかり頭で押し込んでいる。
 昨季もピンポイントのクロスをエトーやそのほかの選手が頭で押し込むことはあったが、上背のある相手に50:50のボールを押し込む場面はほとんどなかった。

「イブラは前線での強さやとキープ力という、新たなものをチームにもたらしてくれた」
 主将プジョルが言うように、バルセロナは新たな攻撃オプションを手にしたのである。
 イブラヒモビッチがカンプ・ノウの心をつかむのに時間はかからなかった。ゴールという結果、味方を生かすチャンスメーク。ほぼ完成されていたバルセロナの攻撃に、高さという新たなオプションも加わった。
 開幕からひと月半。エトーの離脱を嘆いた評論家たちも、今ではずいぶんと静かになった。

<了>

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FCバルセロナ「GOAL COLLECTION」 【写真提供:日本テレビサービス】

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著者プロフィール

ライター、翻訳家。1979年福岡県生まれ。2001年のミラノ留学を経てライターとしてのキャリアをスタート。イタリア、スコットランド、スペインと移り住み現在はバルセロナ在住。5カ国語を駆使しサッカーとその周辺を取材し、『スポーツグラフィック・ナンバー』(文藝春秋)など多数の媒体に執筆、翻訳。近著『欧州 旅するフットボール』(双葉社)がサッカー本大賞2020を受賞。

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