【追悼】プロレスリング・ノア三沢光晴選手
05年 川田との“感情戦”
ドームのメーンで川田と激突 【たかすつとむ】
三沢vs.川田といえば、“感情の戦い”。三沢さんのエルボーは普段以上に鋭角に入り、川田も情け容赦なく顔面蹴りを浴びせる。あまりのエゲつなさに「あぁやっぱコレかぁ」と三沢さんが後述するほどであったが、後輩のすべてを受け止めて、最後はランニングエルボーで沈めてみせた。
至高の名勝負となった小橋vs.佐々木健介という体と体がぶつかり合うセミファイナルとのコントラストもあり、全日本時代と同じく見る者の心に“澱(よど)み”を残す試合となった。
06年 高山復帰戦で
高山(手前)に情け容赦なくエルボー 【田栗かおる】
試合も壮絶を極めた。脳こうそくからの復帰である高山に対し、三沢さんは渾身のフルスイングエルボーを幾度となく叩き込んでいく。さらにエメラルドフロウジョンまで放ってみせたのだ。試合後に高山は、これら三沢さんの本気の攻撃に感謝を述べており、リングに帰ってこれたことを実感したという。
高山は元々ノア所属であったが、当時の総合格闘技「PRIDE」に挑戦するため三沢さんにその旨を申し入れている。すると三沢さんは、ノアにとって貴重な戦力であろう高山のために尽力し、円満に退団も了承。PRIDE参戦以降もフリーとしてノアマットに受け入れており、今日に至っている。筋を通す人間には筋を通して対応する。高山もまた、三沢さんの男気にほれ込んだ一人であろう。
07〜09年 MVP獲得、そして…
潮崎(左)とGTL制覇。そして―― 【t.SAKUMA】
“ノアの象徴”として君臨し、年間通じて王座を守り抜いたことが評価され、この年プロレス大賞MVPを初めて受賞した。
08年3月に森嶋に敗れて王座から陥落すると、表舞台からは一歩引いた形をとる。09年にかけて若手にチャンスを与え、潮崎豪が頭角を現し始めるや、「グローバル・タッグリーグ」でタッグを結成。自らのプロレス道を教え込みつつ、ともにリーグ戦を駆け抜けた結果、見事に優勝を飾ることとなる。そして、その勢いのままにGHCタッグ選手権に臨むことが決定し、6.13広島グリーンアリーナ大会へ――。
リング内でもリング外でも、いつでも逃げず、真正面から受け止め、戦っていた男・三沢光晴。心よりご冥福をお祈りいたします。