日本、レッスルマニアへの思い=WWEバティスタ インタビュー

鶴田倉朗

多忙なスケジュールの合間をぬってインタビューに応じてくれたバティスタ 【(c) 2009 World Wrestling Entertainment Inc. All Rights Reserved.】

 “ジ・アニマル”バティスタのインタビュー後編。「レッスルマニア25」(4月5日、テキサス州ヒューストン)とWWE日本公演(7月7、8日、東京・日本武道館)のプロモーション活動のため来日したバティスタは、分刻みの多忙なスケジュールの合間を縫って、スポーツナビ用インタビューにも応じてくれた。前回のインタビューで人生のターニングポイントに「レッスルマニア21」におけるトリプルHを挙げたバティスタ。その話は日本観からレッスルマニア論まで続いた。

ライバルはランディ・オートン

永遠のライバル、ランディ・オートンとの対戦 【(c) 2009 World Wrestling Entertainment Inc. All Rights Reserved.】

――HHH(トリプルH)やリック・フレアーから受けた影響はやはり大きいですか?

 俺のキャリアには欠かせないだろうね。一番学んだのはサイコロジー(心理学)だね。どうやったら観客を沸かせることができるか、観客と精神的につながるか。そのためにはいつどんなタイミングで技を出すか。どうやったらほかの選手と違う動きができるか。サイコロジーを学ぶことでプロレスはアートだとわかるようになった。

――身に着けているものはフレアーの影響?

 そうかもしれない。テレビに出るときはそうだ。でも、家にいるときはルーズな格好をしているよ(笑)。いいモノを身に着けることはたしかに好きだが、昔よりはブランドにこだわらなくなっているかな。(スーツなどを着ていると)小さい子どもには距離感を感じるかもしれないと思って、最近は変わってきているんだ。

――現時点でのライバルはだれですか?

 ランディ・オートンだろうね。エボリューション時代から俺とオートンの間には長いヒストリー(歴史)がある。エボリューションを通じてお互いに同じ時期に成長した。さらに、オートンは才能に恵まれている。オートンは俺やトリプルHや多くのレスラーより大きいわけではない。だが、大きなチャンスをつかんでいる。ライバルと思うのはごく自然な感情だろう。

――その肉体を維持するためにどんなトレーニング、食事を心がけていますか?

 今はバランス重視のトレーニングをしている。ウエートをやりすぎてもバランスが悪くなるから、柔術やムエタイ、カリと呼ばれるフィリピンの武術の動きを取り入れている。それらの動きを試合で見せるというのではなく、やわらかい動きに対応できるようにという意味合いでだね。食事はプロテインシェイクを飲むのを含めると一日6回。ただ、サプリメントやプロテインを多用しすぎると筋肉が付きすぎてしまうからそれには気をつけている。筋肉が付きすぎることではなく、動きやすい体を作ることが重要だから。

日本はベスト・オブ・マイ・ワールド

今回の来日ではテレビ、インタビュー、スポーツ新聞社訪問、サイン会と精力的に取材をこなした 【(c) 2009 World Wrestling Entertainment Inc. All Rights Reserved.】

――入場時にシコを踏むような動作がありますね。

 そう、あれはスモー(相撲)のムーブだよ。昔から(相撲)の大ファンだったんだ。足を高々と上げてシコを踏む動作を見たときに「こんなに人を大きく、堂々と見せる動きがあるのか!」と感嘆したんだ。これを取り入れない手はないと思ったね。残念ながら最近は見ていないんだが、アキボノ(曙)と会ったときはうれしかったよ。

――左腕に「天使」という漢字のタトゥーが入っています。これを入れたきっかけは?

 前妻が日本人とアメリカ人のハーフで、彼女の名前から取った。彼女の母親(日本人)に「天使」と書いてもらって、それをそのままタトゥーショップに持っていったんだ。

――過去に日本を訪れてどんな印象を持っていますか?

 それを聞かれるとこう答えているんだ。トーキョー(東京)はニューヨークよりも大きくて、ニューヨークよりもきれいな都市で、人々も礼儀正しい、って。いつでもどこでもなんでも買い物ができて、ナイトクラブも充実している。ただ、ひとつだけなんとかしてもしい点を挙げれば、ほしいシャツがあっても俺に合うサイズがない(笑)。でも、日本はベスト・オブ・マイ・ワールドだね。

――日本での思い出を挙げるとしたら?

 リングの中でも外でもいい思い出ばかりだなぁ……。リングの中だと、最初に日本で試合をしたときだ。アメリカの観客と違ってサイン(プラカード)がほとんどないことにまず驚いた。たしかケインと試合をしたと思うが、観客が試合中、ずっと静かだった。アメリカの観客しか知らなかったから独特に感じたし「ああ、俺はひどい試合をしてしまったのか……」とバックステージに戻って落ち込んだんだ。そうしたらクリス・ジェリコが飛んできた。「観客が静かだったろ? それはみんな注意を払って見て、そしてリスペクトをしている証拠なんだ」って。それで日本の観客の姿勢に感動したね。
 俺は試合に関しては完璧主義者だから、隅々まで見てくれる日本のファンの前で試合をするのは本当に楽しみなんだ。だから日本では毎回、モチベーションがアップするね。こんなすばらしい観客はほかにいないよ。

レッスルマニア25周年にふさわしい大会になる

「レッスルマニア25」で対戦するランディ・オートンとHHH。お互いの家族を巻き込んでの因縁試合に発展 【(c) 2009 World Wrestling Entertainment Inc. All Rights Reserved.】

――「レッスルマニア25」が近づいています。レスラーから見てどんなイベントですか?

 「なぜレッスルマニアは特別なのか?」とよく聞かれるが、それを答えるのは難しい。それくらい特別なんだ。リング上の試合や出来事も、レスラーのコンディションも、1年間のすべてがそこへ向かっている。一言でいうなら壮大なワールドワイド・イベント、かな。世界各地からこのイベントに人が集まるのは、やはり特別なものとだれもが認識しているからだろうね。

――レッスルマニアを初めて見たときのことを覚えていますか?

 テレビで見ていて、とにかくアナウンサーが「レッスルマニア、レッスルマニア、レッスルマニア!」と連呼していたことをよく覚えている。そんなにすごいイベントなんだって、それだけで伝わってきた。あと覚えているのは、ハルク・ホーガンがアンドレ・ザ・ジャイアントをボディースラムで投げ捨てたシーン(レッスルマニア3)。頭をハンマーで叩かれたような衝撃を受けたよ。

――今年の「レッスルマニア25」は一ファンとしてどこに注目しますか?

 それはたくさんありすぎる(笑)。まず一番はトリプルHvs.ランディ・オートン。これは俺に影響を与えた、友人であり先輩であるトリプルHと、長い間競い合ってきたオートンというふたりがいるから。どちらも俺に深い関わりがある。個人的にもこれは重要な試合だね。オートンに対しては、ジェラシーというよりは“うらやましい”のほうが近いかな。レッスルマニアの舞台で戦えることがうらやましい。そしてその場に自分がいないことが残念だ。理想をいえばいつかはオートンとレッスルマニアのメーンで戦いたいと思う。
 あとはアンダーテイカーとショーン・マイケルズ。アンダーテイカーはレッスルマニアで一度も負けていないという大記録がある。マイケルズはミスター・レッスルマニアだ。なんて刺激的なカードなんだろうね。ふたりはロイヤルランブルでもライバルとして戦っていたし、戦う意味合いもある。どちらも見逃せないんじゃないか。レッスルマニア25周年にふさわしい大会になるよ。

「レッスルマニア21」のバティスタvs.トリプルH 【(c) 2009 World Wrestling Entertainment Inc. All Rights Reserved.】

◇     ◇     ◇      ◇     ◇     ◇
 バティスタがターニングポイントとして挙げた「レッスルマニア21」のトリプルH戦は、実はその2カ月前の日本公演が起点となっている。さいたまスーパーアリーナで開催された“ロウ”で、バティスタは同盟関係にあったトリプルHに対戦の意思表示をした。つまりはバティスタの中に日本はしっかりと刻まれている。少し照れ性で繊細で気さくな好人物は、3日間の短い滞在を終えると、次のプロモーション地オーストラリアへ向かった。
■WWE日本公演「WWE SMACKDOWN LIVE」
7月7日(火)、8日(水) 東京・日本武道館

■「レッスルマニア25」放送スケジュール
・4月16日(木)22:00〜 スカパー!、スカパー!e2でPPV放送(視聴料金2100円/回)
・4月17日(金)〜 J:COMオンデマンドにてVOD放送(視聴料金2100円/回)
・4月18日(土) パブリックビューイングイベント※詳細はWWE JAPAN公式サイトで発表

■WWEのレギュラー放送「ロウ」「スマックダウン」「ECW」はJ SPORTSで好評放送中
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

90年代、黄金期の週刊プロレスで四天王時代の全日本番記者を務め、ジャイアント馬場の絶大な信頼を勝ち取る。フリー転向と同時に渡米。WWEから柔術まで、また米国内にとどまらずイギリスからブラジル、パラオまでと、取材対象と守備範囲を一気に広げる。更には2004年から東京スポーツのマリナーズ番として、イチローを中心に日本人メジャーリーガーを密着取材。ライティングもカメラもこなす国際感覚豊かななんでも屋。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント