横地愛、ライバル村田を破り日本のトップに=新体操世界選手権日本代表決定競技会
村田を抑え、ついに日本のトップに立った横地(写真) 【榊原嘉徳】
世界選手権への切符は4枚。昨年末の全日本新体操選手権の上位20人(うち6名は引退)と推薦選手二人によって競われたこの大会は、紛れもなく現在の日本の新体操界におけるトップレベルの戦いであった。
横地、逃げ切り勝ち 重圧との戦い
初日のフープ、ロープでは目立ったミスもなく、情感あふれ、音楽と一体となった演技を見せた横地。しかし2日目のリボンでは、珍しくリボンが体につくなど細かいミスが出てヒヤリとさせた。さらに最終種目のクラブでは、スピード感あふれるクラブさばきを見せながらも演技中盤でまさかの2本落下。手具操作の巧(うま)さには定評のある横地らしからぬミスに場内はどよめいたが、これがプレッシャーというものか。
1日目終了後の記者会見で横地は「首位といっても通過点なので、最後まで集中を切らさないようにしたい」と語った。今までにも折り返し地点では“女王”村田由香里を上回っていたことは何度かある横地である。ただ、最後まで村田の上にいたことはない。そのことが、横地の頭にまったくなかったとは思えない。考えないように、無心であろうとしてはいても、やはりプレッシャーはあったはずだ。「結果よりも、明日は自分のやりたいと思っている演技が見せられるようにしたい」その横地の言葉は心から出ていたと思う。その“こだわり”が横地らしさであるから。ただ、そう思うことで平常心で2日目を迎えたい、そうしなければ、という気持ちの表れでもあったのだろう。
後半2種目は横地にとって満足のいく出来とは言えなかっただろう。しかし、試合には勝った。そんなこともあるのだ。「十分にやれた!」という演技でも勝てなかった、そんな思いも何度もしてきた横地だから、こんなことがあってもいい。何度も何度も2位に甘んじてきた横地愛を、新体操を長く見てきた観客はよく知っている。それでも輝きを増し続けてきた横地愛を多くの人たちが知っている。長い長い時間がかかったが、横地愛は日本のトップ選手としてギリシャに行く、そのことに拍手を送りたい。
「五輪の枠を取ってきます」村田の強い決意
世界選手権の代表切符を勝ち取った(前列左から)大貫、横地、村田、日高。後列は団体の日本選抜メンバー 【榊原嘉徳】
3位の日高舞(東京女子体育大学)は、2日目の2種目ではいずれも1位。まだ大学1年生ながら見事な追い上げを見せた。2年前の世界選手権では団体とかけもちで、個人は1種目しか出場していない日高だが、今回は日本選手団の大きな戦力になりそうだ。4位の大貫友梨亜(東京女子体育大学)も、2年前は日高とともに団体のメンバーとして世界選手権を経験している。その経験はきっと生きるに違いない。
ユース世代も大健闘
演技中に鼻血を出すアクシデントに見舞われながらも、会心の演技を見せた遠藤 【榊原嘉徳】
この3人の選手たちの美しさ、また能力の限界を超えたところまで、本番で見せようとする果敢さは多くの人の心に響いたはずだ。彼女たちは、無難な演技での「そこそこ上の位置」など目指していない。「トップ」を目指している。その志の高さ、潔さが必ず未来を切り開いていくだろう。北京五輪、いや、その後かもしれないが、彼女たちの時代は必ずやってくる。そのとき、日本の新体操は大きく変わる、大きく前進する。そう信じたい。
<了>
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