柳本ジャパンが試すべき策とは=ヨーコ・ゼッターランドが語るバレーW杯

ヨーコゼッターランド

北京五輪出場権を懸けたW杯が開幕 【坂本清】

 11月2日からスタートしたワールドカップ(以下、W杯)。8日現在で各チームが5試合を終え、女子は後半戦に入る。地上波では放送されていないBサイト(=B会場)では激闘が繰り広げられており、ブラジル、米国、キューバ、そしてポーランドが絡み、何度もフルセットの戦いを展開している。北京五輪出場権の懸かった上位3チーム入りへの争いは、最終日まで分からない状態になりつつある。また北京五輪出場権を勝ち取る、ということだけでなく、このW杯は五輪のメダル争いを占う大会としてとらえることができる。地元開催の中国が加わり、まだ姿を見せていないロシアやオランダなどのヨーロッパ勢がどのようにして五輪の舞台上で躍動するのか今から楽しみになってきた。

 この2〜3年は、各国とも新旧選手の交代によるチームづくり、中国の司令塔である馮坤を除いて安定したセッターの養成に悩みを抱える様子が見受けられたが、さすが、五輪前年のこの時期までには7〜8割方の仕上がりを見せてきている。アテネ五輪後の試行錯誤の形跡がまだとれていない部分もあるが、来年までにはそれも解消されそうな気配が漂っている。

 さて、日本はここまでドミニカ共和国、韓国、セルビア、タイそしてイタリアと戦い、3勝2敗。セルビアとイタリアに黒星、韓国には勝ったものの1セットを奪われた。またドミニカとタイにはストレート勝ちを収めている。現在のところ一つ白星が先行しているが、今後強豪国との対戦が控えていることを考えると、不安な気持ちをぬぐい去ることができない。

第1戦:白星発進のドミニカ戦

 ここまでの戦いを振り返りながら、今後どのような展開になるか考えていきたい。
 ベテランと若手で構成されたドミニカは、高い位置(レベル)での安定性は望めないが、突如として17〜18歳の選手が大爆発して金星につながる試合をすることがある。しかし大会序盤では、それはあまり期待できない。日本は立ち上がりで苦戦したが、第2、第3セットは無難に収めた。分析はしていても未知の部分を残すドミニカを封じ込め、白星スタートできたことは全体的な戦略として良かったと考えられる。ただ長期的なスパンで両チームを比較した場合、北京五輪後のドミニカは日本にとって今日以上に警戒しなくてはならない要素を多分に秘めているという印象を強めた1戦だった。

第2戦:ストレート勝ちがほしかった韓国戦

 第2戦の韓国。日本は二つ目の白星を挙げたが、今後のことも考えてできることならストレート勝ちを収めてほしかった。(韓国は)確実に点を取るパターンにはまった時は、以前のようにネット幅を使った時間差攻撃を再び多用してきた。速さに高さが加わり、バックアタックも盛り込んできている韓国が、独特の「持久力」を復活させた試合運びをすれば、日本は苦戦を強いられるだろう。とくにW杯や五輪での対戦の際は、「もしかしたら勝てるかもしれない」という感覚を、決して与えてはいけない。

 厳しい見方かもしれないが、日本はこのW杯で白星を挙げられる相手に対しては、ほぼ完ぺきな試合内容でいくことが必要だ。どのチームでもどんな時でも必ず課題は残る。しかし、その課題には不安が含まれないことが重要だ。

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著者プロフィール

1969年、米国(サンフランシスコ)生まれ。6歳から日本で育ち、12歳で本格的にバレーボールを始める。早稲田大学卒業後に単身渡米し、米国ナショナルチームのトライアウトに合格。USA代表として1992年バルセロナ五輪で銅メダルを獲得し、1996年アトランタ五輪にも出場した。現在はスポーツキャスターとして、各種メディアへ出演するほか、後進の指導、講演、執筆など幅広く活動している。

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