初戦辛勝のシャラポワ、危険な兆候=全豪オープンテニス

武田薫

技術は向上しても性格は変わらない

初戦で苦しんだシャラポワに見えた危険な兆候とは…… 【Getty Images/AFLO】

 大会2日目の第1試合、センターコートに第1シードのマリア・シャラポワ(ロシア)が登場した。ジュスティーヌ・エナン・アーデン(ベルギー)の欠場による繰上げシードながら、昨年の全米オープンで2年ぶりにメジャータイトルを奪還した、文句なしの“女王様”だ。オフは十分な休養をとり、課題のサービス改造に取り組み、「体力的にもトップに負けないと思えるようになった。これまでの努力が自信につながっている」と期待を寄せていた。
 シャラポワの強みは、破壊的なショットと集中力。その集中力を、エナンやアメリ・モレスモ(フランス)といったベテランに巧みに断たれて足踏みが続いたが、ついに昨年、その壁を突破した。テニスではよくこんな言葉を耳にする――技術は向上しても性格は変わらない。

 初戦の相手、世界62位のカミーユ・パン(フランス)とは初対戦。162センチ、53キロの小柄なベースライン・プレーヤーには戦術の幅がある。第1セットを落としても、そこでシャラポワの気分をかき回し、長丁場に持ち込んで自滅を誘う……。第1セットはシャラポワが6−3で先取。ただ、パンはその第4、第7ゲームの長いジュースに粘り勝って、次の布石作りに成功にした。だてに25歳ではない。第2セットの立ち上がりから反撃に出ると要所で相手のミスを誘い、セット・オール。第2セットに入ると、シャラポワのポイント数は41から22まで半減し、それもウィナー数が25から14まで落ちこんだ内容に、危険な兆候が見えていた。

暑さに原因を求める姿が暗示する課題

 嫌な流れの一因は暑さだったが、そのオーストラリアの気候は救いにもなった。あらためて、テニスはアウトドア・スポーツなのである。
 この日は、最高気温が41度まで上がり、特別ルールで他の試合は中断され、屋根付きの二つのコートだけで試合が続行されていた。さらに、フルセットに入る前、選手には10分間の休憩が与えられる特別ルールがある。シャラポワはこの休憩時間に気持ちを切り替え、第3セットはいきなり5ゲーム連取、5−0の相手サービス0−30、あと2ポイントまで追い込んだ。

 5−2からマッチポイントを2本握り、そこから挽回された。勝ちはしたが、5−0から9−7まで勝負を決められなかった。途中、トレーナーを呼んで腹痛を訴えている。試合後の治療時間も長く、暑さがこたえたという。だが、二人の力関係を考えたとき、この日の苦戦はそれ以前の課題を暗示する。サービスの最高時速がわずか138キロの相手を一気にねじ伏せられなかったのは、暑さあるいはシーズン開幕という時期のせいだけなのか。
「午前11時に始まって1時間15分で終わっていたかもしれない試合ね。第2セットは5−0まで行った。まあ、負けなかっただけ良かったわ」
 シャラポワは、まだ、ちょっと目を離せない。

<了>
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著者プロフィール

宮城県仙台市出身。男性。巨人系スポーツ紙の運動部、整理部を経て、1985年からフリーの立場で野球、マラソン、テニスを中心に活動。新聞メディアや競技団体を批判する辛口ライターとして知られながら、この頃は甘くなったとの声も。テニスは85年のフレンチオープンから4大大会を取材。いっさいのスポーツに手を出さなかったが、最近、ゴルフを開始。フライフィッシングはプロ級を自認する

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