「福原」だけじゃなかった、卓球・全日本選手権

野中直広

日本卓球界、かつての栄光と現在

 卓球で有名な選手といえば、誰もが「福原愛」を思い浮かべるだろう。しかし、ほかに名が挙がるだろうか。全日本選手権を4回優勝し、オリンピックに4大会連続で出場している「松下浩二」でさえ、知らない人が多いと思う。

 だが、団塊の世代より上の方々は、昔、日本の卓球が世界で何度も優勝していたことを覚えているはずだ。そう、1952年(昭和27年)に日本が世界選手権に初参加した時から1979年まで、日本は出場した世界大会で必ずいずれかの種目で金メダルを獲得してきた。団体では男子7回、女子8回優勝。シングルスの世界チャンピオンは、男子7名(9回)、女子6名(7回)の優勝を誇る。その中で最も有名な選手が「荻村伊智朗」だ。自身12個の金メダルを獲得。そして1987年から永眠する1994年まで国際卓球連盟の会長を務めている。
 さて、そんな輝かしい歴史を持つ日本の卓球だが、1979年に小野誠治が世界チャンピオンになってからは世界のタイトルから遠ざかっている。それどころか、現在ではメダル獲得も難しい。女子団体で3大会連続して銅メダルを獲得しているが、きわどい勝負の末、本当のぎりぎりのところで銅メダルに手が届いているというのが現状である。それを考えると、昔の日本がどれほどすごかったことか。

 その偉大な先輩方に追いつけ追い越せと福原愛(グランプリ)をはじめ、日本のトップ選手は世界を目指して日夜練習に励んでいる。財団法人日本卓球協会の強化本部ではナショナルチームを常設し、国際競争力の向上、世界の王座奪還を目指している。それでも男子は、スウェーデン、ドイツ、フランスなどヨーロッパ諸国も卓球が盛んで強く(ヨーロッパ諸国にはプロリーグがある)、世界との差を少しずつ広げられている。2004年の世界選手権では団体で12位、2006年は14位という成績である。前述したように男子はヨーロッパ諸国も強いので、考えようによってはこの成績でも健闘している方かもしれない。比較するのもおかしいが、サッカーがワールドカップで決勝トーナメントに進出することさえ難しいことをみると、そう落胆することもない。だが、卓球界では過去の栄光がすばらしいだけにこの成績では風当たりが強いことは事実だ。
 一方、女子は中国が圧倒的に強い。過去30年、中国が世界の卓球界を支配しているといっていい。その中国を倒そうという目標があるのだから、日本の女子も心強い。福原愛を中心に“打倒中国”に向けて走っているのが、日本の女子だ。

福原の記録を破った石川、四元のファッションが話題に

 話は変わるが、1月16日から21日まで今年度の全日本選手権大会が開催された。連日の報道で福原愛が敗れたことはご存知な方も多いと思う(女子シングルスベスト8決定戦敗退)。国際競争力を考えると、福原愛は1月現在の世界ランクは13位。国際大会では日本の堂々たるエースである。しかし、国内では福原を脅かす選手がたくさんいる。福原でさえ中学1年生で全日本ベスト8に入ったが、高校3年となった今日まで全日本では準決勝にも駒を進めていない。つまり、それだけ日本の女子はレベルが高いということを裏付けている。
 この全日本で、福原愛の最年少記録を塗り替える選手が出現した。石川佳純(ミキハウスJSC)――中学2年生13才がベスト4に入ったのだ。石川の活躍は報道関係者を驚かせ、卓球関係者を喜ばせた。なぜなら、福原愛ほどの逸材が出現する可能性は限りなく少ないと思われていたからだ。全日本でベスト4に入ったからといって、石川が現段階で福原の実力を超えたわけではないが、福原以外の卓球選手が世間やメディアから注目されるには十分なインパクトであった。
 まったく別の意味で注目されたのは、四元奈生美(東京キングコング)だ。それは、大胆なユニホームのファッション。『卓球がもっと華やかになってほしい』と話すが、確かに卓球のユニホームは地味ではある。今後の卓球のファッション性がどう変化してくるか楽しみである。

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著者プロフィール

東京都出身。中学から大学まで卓球部に所属するが全日本級の実績はない。大学卒業後、某卓球メーカーに就職。独立するまでの約17年間は主に卓球専門誌の編集に従事。その間、国内の主要大会はもとより、世界選手権やオリンピック、アジア大会など主要大会を取材。独立後は、卓球用品の販売、卓球フリーライター、カメラマン、卓球コーチなど卓球に関わるあらゆることに挑戦。そのほか、文部科学大臣認定卓球公認コーチ、日本卓球協会公認審判員の資格を持つ。卓球の普及・発展、世界での活躍を熱望する一人

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