フェデラーへの挑戦権はゴンサレスに=全豪オープン

武田薫

ヒューイット、ブレーク、ナダルを撃破

フェデラーへの挑戦権を得たゴンサレス。破竹の勢いのまま、無敵の王者を倒せるか 【Getty Images/AFLO】

 男子シングルス決勝は、ロジャー・フェデラー(スイス)とフェルナンド・ゴンサレス(チリ)の対決となった。
 25日、先に行われた準決勝第1戦は、フェデラーと昨年の全米オープン準優勝のアンディ・ロディック(米国)という豪華な顔合わせ。フェデラーの打つボールがすべて決まったと言っていいほど一方的な試合で、6−4、6−0、6−2という意外な大差がついた。ポイント数83―45、ウィナーが45−11、記録上のミスが12−18と数字の上でも圧倒し、「こういう試合もたまにはある。ロディックは忘れるしかない」とフェデラー自身も驚く内容だった。このオーストラリアで3年前、昨年と優勝しており“リバウンドエース”と呼ばれるバウンドの高いサーフェスが合っていることは確かだが、これで一昨年のウィンブルドン選手権以来、グランドスラムを7大会連続で決勝進出(昨年の全仏以外は優勝)、まさに無敵の帝王だ。

 しかし、これはかなり高い確率で“想定内”のこと。大会前から、今年はフェデラーへの挑戦者決定戦といわれていた。
 昨年、フェデラーは92勝5敗で12回の優勝という驚異的な記録を残した。その5敗はラファエル・ナダル(スペイン)に4敗、新鋭のアンディ・マレー(英国)に1度負けている。この2人が、組み合わせではフェデラーと逆の山に入り、4回戦で潰しあった。ナダルはこの深夜1時過ぎまでの激戦を制したものの、続く準決勝のゴンサレス戦に、影響があったことは否定できない。ゴンサレスは、地元オーストラリアのレイトン・ヒューイットに続き、4回戦で今季最も注目される一人、ジェームズ・ブレーク(米国)に7−5、6−4、7−6と競り勝った勢いをナダル戦で発揮。6−2、6−4、6−3でクリアして、トミー・ハース(ドイツ)との準決勝に大きなはずみをつけてきた。

執念見せたハースも脱帽の勢い

 ハースは、いかにも慎重な立ち上がりだった。
 グランドスラムではこれが3度目の準決勝進出。1999年、2002年に次いで、すべてがこの全豪オープンでのもので、28歳はどうしても勝ちたかっただろう。というのは、ハースは02年の4回戦でファイナルセット8−6でフェデラーを倒し、準決勝でマラト・サフィン(ロシア)にフルセットで敗れている。この年の3月にハースは世界ランクを2位まで上げながら、運命はそこで暗転。肩の故障で2度の手術を受け、両親の交通事故が重なるどん底の苦しみを舐めた。2003年には1試合もプレーせず、フェデラーの快進撃を外野から見ざるを得なかった。そうした背景を乗り越えて迎えた3度目のチャンスだった。
「試合が終わって、どうにかならなかったかと考えたが、記録を見て納得した」
 ポイントが、ゴンサレスから82−45、ウィナーは42−20、ミスは3−21。とりわけミスが第2セットの3本だけと、まるで前日のフェデラーを思わせる完ぺきな内容だった。後悔のしようもないテニスだが、あえて指摘するなら、立ち上がりの硬さだ。2ゲームを立て続けにラブゲームで取られ、勢いをつなげてしまった。ハースとすれば相手の勢いを織り込みながら、じっくりフルセット勝負に持ち込みたかったところだろうが、ヒューイット、ブレーク、ナダルを倒してきたゴンサレスの勢いが勝ったのだ。
 決勝は、ともに準決勝で完ぺきなテニスをした2人の激突。ゴンサレスの勢いを、帝王フェデラーがどうさばくのかが見ものだ。

<了>
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著者プロフィール

宮城県仙台市出身。男性。巨人系スポーツ紙の運動部、整理部を経て、1985年からフリーの立場で野球、マラソン、テニスを中心に活動。新聞メディアや競技団体を批判する辛口ライターとして知られながら、この頃は甘くなったとの声も。テニスは85年のフレンチオープンから4大大会を取材。いっさいのスポーツに手を出さなかったが、最近、ゴルフを開始。フライフィッシングはプロ級を自認する

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