田澤だけじゃない! 選手権で輝いた選手たち=第35回社会人野球選手権リポート

島尻譲

大卒新人三羽ガラスが連覇の原動力

荻野、田中とともにルーキートリオとしてトヨタ自動車をけん引した荒波 【島尻譲】

 一際、目立っていたのは荒波翔荻野貴司田中幸長(トヨタ自動車)の大卒新人三羽ガラス。荒波と荻野は状況判断に優れた快足と長打力があるところを存分にアピール。田中は決勝戦で逆転3ランを放って勝負強さを見せた。チームを率いる山中繁監督も「新人3選手が機能していなかったら連覇はなかった」と振り返る。
 また、社会人2年目の大谷智久(トヨタ自動車)も今大会5試合中4試合に登板。うち3試合に先発して3完投(日本通運戦は完封勝利)と、フル回転で大会MVPに輝いた。報徳学園高時代のセンバツ大会制覇に続く胴上げ投手という栄冠からも勝負運がある。
 大島洋平(日本生命)は俊足巧打の外野手で大会首位打者を獲得。特筆すべきはセンターからの好返球で、今大会では2度もチームの危機を救った。守備位置が一塁手ということで評価は分かれるだろうが、磯部泰(新日本石油ENEOS)の力強い打撃も見逃せない。ホンダ鈴鹿戦で放った左翼5階席への特大本塁打は圧巻であった。
 大体大時代に日本一も経験している渡邊敬之(ホンダ鈴鹿)はショートでの自慢の守備に加えて、今夏から俊足を生かすべくスイッチヒッターに挑戦。右打席で本塁打を放った後に、左打席でも安打を放つなど適応力の高さが光った。
 山本哲哉(三菱重工神戸)は新日本石油ENEOS戦で立ち上がりこそ不安定だったが、右腕から常時140キロ台中盤を計時するストレートとキレ味鋭いタテのスライダーは秀逸。山本と南部高で同級生であった岡本洋介(ヤマハ)も制球力に優れており、試合をシッカリとつくれる力がある。184センチの長身サイドハンドである濱野雅慎(JR九州)は今大会ではリリーフ登板のみであったが、長いイニングを任せることができる。高卒4年目の梶本侑平(新日鉄広畑)も2試合で1完封を含む24回3失点と安定感があった。
 また、来年のドラフト解禁選手ではないが、熊代聖人(日産自動車)のプレーも目を引いた。今治西高時代は投手としても輝いていたが、社会人入り後はセカンドに専念。高卒1年目ながらパンチ力とスピードを武器に名門チームの3番打者に定着した。

社会人の醍醐味である熟練の投球術

 準優勝の原動力となった川野慎也(JR東海)は神戸製綱6年を経て社会人生活12年目のベテラン投手。チームメートの社会人8年目・中須賀論(JR東海)も先発・抑えで活躍して優秀選手賞を獲得した。3戦に先発して2勝(完封1)の竹中慎之介(日本生命)は5年目にして一本立ちの感がある。社会人7年目の左腕・米藤太一(JR九州)も2試合で21回2失点という投球のうまさを見せた。
 このような中堅以上の投手たちの“押したり引いたり”という熟練の投球術も社会人野球観戦の一つの醍醐味だろう。

<了>

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著者プロフィール

 1973年生まれ。東京都出身。立教高−関西学院大。高校、大学では野球部に所属した。卒業後、サラリーマン、野球評論家・金村義明氏のマネージャーを経て、スポーツライターに転身。また、「J SPORTS」の全日本大学野球選手権の解説を務め、著書に『ベースボールアゲイン』(長崎出版)がある。

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