世界基準で見る柳本ジャパンの現在地=ヨーコ・ゼッターランドのバレーW杯女子総括
ブラジルが見せた効果的なバックアタック
チーム最多の162得点を稼いだ栗原。日本が進化するためには、エースのさらなる成長が求められる 【坂本清】
日本も栗原恵のバックアタックを取り入れているが、コンビネーションの中で使っているというより、単発の感が強い。前衛と相手ブロック陣の合間を縫うようなイメージでバックアタックが使えるようになると、効果アップが期待できるかもしれない。
外国勢から学ぶ強化のヒント
4位のキューバ、5位のセルビアは両チームともに監督が「若さ」と「経験不足」、そして「けが」を苦戦した要因として挙げた。大会を通じ、それらの理由は見る側にとっても十分説得力を持っている。プレーが荒いし、ミスも多い。さらに勝負どころを抑えきれない甘さもあるが、随所で見せるプレーは「先の楽しみ」を与えてくれるものだった。例えばセルビアのセッター、オグニェノビッチ(23歳)のトスワークや丁寧さがキラリと光った。セルビアのテルジッチ監督は敗れたブラジルやキューバに対し、敬意を表しつつもユーモアたっぷりの会見で、「北京五輪決勝の舞台でのリベンジ」を明言。目が離せないチームのひとつとして存在感を示した。
最終予選に向け、見えてきた課題
最終予選に向け、取り組むべき課題を見極めたい日本 【坂本清】
上位陣に対してもスコアを見ると歯が立たなかった印象は否めないが、それでも取った得点の中身を見ると、センター線のクイックが以前より多く含まれていたりと工夫の跡もうかがえる。また、リベロの佐野がベストディガーになった。それ自体は喜ばしいことではあるが、反対の側面も見なくてはならない。佐野が拾うことが多いというのは、それだけ相手の攻撃が抜けてきていることでもある。ちなみにFIVB(国際バレーボール連盟)の公式記録でベストディガーの項目を見ると、1位が佐野、7位に高橋みゆき、10位に木村沙織と3名が入っている。しかし得点を取る項目になると、スパイク決定率では10位以内はゼロ。ブロックではかろうじて荒木が9位に入ったのみである。
記者会見の席でセルビアのテルジッチ監督がチームの課題について聞かれ、次のように回答した。
「どのチームでも、いつでも、なんでも課題はある。大切なのはそれが何かを的確に見極めて修正していくことだ」
シンプルに聞こえるが、私は今の日本にとって一番必要で、大切なアドバイスに聞こえたコメントであった。
<了>