「限界説」をはねのけ、復活を遂げた村主=スケートカナダ

辛仁夏

欧州女王のコストナーは不振

スケートカナダ、女子シングルで優勝したロシェット(中央)と2位村主(左端)、シズニー(右端) 【Photo:アフロ】

 フリー2位と健闘したアリッサ・シズニー(米国)は、試合ではいつも精神的な弱さを露呈していたが、この日は見違えるほどだった。苦手のジャンプでミスを最小限にとどめたことが奏功。SP6位からの躍進で総合3位に食い込み、3季前のスケートカナダでの優勝以来、3年ぶりの表彰台に上った。
 ジャンプではほとんど加点を取れなかったが、柔軟性を生かした得意のスピンではポイントを積み重ねた。彼女のスピンは、そのバリエーションもさることながら、ポジションの美しさとともに、高難度のポーズを取りながらの高速回転をいとも簡単にこなしてしまう技術力のすごさである。このスピンを見せられると、ほかの選手のスピンが色あせて見えるほどだ。このスピンは必見と言っておきたい。

 優勝候補に挙げられていた欧州選手権2連覇で世界選手権2位のカロリナ・コストナー(イタリア)は、変わらぬスロースターターぶりを発揮。初戦となったスケートカナダでも調子をピークに持って来れなかったようで、SPではジャンプで転倒するなど7位と出遅れた。フリーでも全体的にピリッとせず、冒頭の2連続3回転ジャンプでは2つ目のジャンプが2回転となり、単発の3回転ルッツの着氷で前のめりになるミスを犯した。スピンでもレベル1を取るお粗末さで、まったくいいところなく初戦を終えた。

ジャンプに課題が残った武田

 シニア1年目だった昨季、2大会で表彰台に上り、GPファイナルで4位と大健闘した米国新世代の一人、キャロライン・ザンの今季初戦は、ほろ苦スケートになった。ジャンプで転倒しながらSP3位で迎えたフリーだったが、苦手の3回転ルッツが1回転になり、3回転フリップで転倒。連続ジャンプは成功させたものの、精彩を欠いたジャンプで得点が伸び悩んだ。柔軟性抜群のスピンでは好得点をマークしたが、レベル2しか取れなかったステップはまだジュニアレベルで課題は多かった。

 シニア2年目を迎えた武田奈也(早大)は、プログラムの内容に寂しいものがあり、上位を狙うにはなかなか厳しい感じがした。武田の今季初戦の結果はSP8位、フリーは9位、総合で9位とまったく振るわなかった。フリーのプログラムは『白鳥』で大人っぽい演技を披露し、表現力では成長した跡がうかがえたが、ジャンプの種類をみるといまだ難度の高いルッツ、フリップ以外の3種類しか跳べないのでは勝負にならない。その上、3回転ループも3回転サルコーも安定感がないのが気掛かりだ。厳しいことを言うが、ジャンプを5種類跳ばなければ、最初から不利な戦いを強いられても仕方がないと言えるだろう。その体形を生かしたダイナミックな演技で、表現力にますます磨きがかかっているだけに、現行のルールでジャンプが3種類しか跳べないのは残念でならない。今後の成長を期待したい。

<了>

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著者プロフィール

 東京生まれの横浜育ち。1991年大学卒業後、東京新聞運動部に所属。スポーツ記者として取材活動を始める。テニス、フィギュアスケート、サッカーなどのオリンピック種目からニュースポーツまで幅広く取材。大学時代は初心者ながら体育会テニス部でプレー。2000年秋から1年間、韓国に語学留学。帰国後、フリーランス記者として活動の場を開拓中も、営業力がいまひとつ? 韓国語を使う仕事も始めようと思案の今日この頃。各競技の世界選手権、アジア大会など海外にも足を運ぶ。

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