北京で手にした最高に輝く4位=北京パラリンピック・競泳

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本当に自分をほめてあげたい

競泳の女子100m平泳ぎ決勝に出場した野村真波は、惜しくも4位。でも野村は「力をすべて出し切りました」と、笑顔で答えた 【Photo:杉本哲大/アフロスポーツ】

 レース直後、満面の笑みで報道陣の前に姿を現した彼女は、まるでメダリストのようだった。だが、結果を言ってしまえば、メダルにあと一歩及ばず4位。それでもインタビューでは、「私にとっては、3位も4位も変わらないんです。力をすべて出し切りました。本当に自分をほめてあげたい一日でした」と答えた。
 この言葉こそ、彼女がパラリンピックの舞台に立つまでの、苦難の道のりを表しているのだろう。

 9日夜に行われた競泳の女子100m平泳ぎ決勝。第6レーンに登場した野村真波は、スタート直後から積極的な泳ぎを見せ、50メートルを3位で折り返した。後半は第5レーンのイギリス人選手と接戦を演じ、最後は0.27秒届かず4位に終わった。

水泳との出会いがすべてを変えた

 野村は看護師学校に在学中の2004年、オートバイを運転中に事故に遭い、右腕を失った。事故後は当然のように落ち込んだ。だが翌年、水泳との出会いが彼女を変えた。
「水泳に出会わなければ、うじうじして看護師にもなれなかった」
 その後、野村はハンデを乗り越え、見事に看護師資格を得た。現在は、神戸市内の病院で働く現役の看護師だ。

「(障害者になって)心の中から変わらないといけないと思ったし、人から『腕がない』と言われることも受け止めないといけない。だから自信をつけるためにも、水泳との出会いは大きかったです。心の中まで障害者にはなりなくなかった。これからはアスリートとしての障害者で頑張っていきます」

 NHKの五輪テーマソングとして、五輪期間中に何度も耳にしたMr.Childrenの曲の中に、こんな一節がある。
「一番きれいな色ってなんだろう? 一番光ってるものってなんだろう?」
 人それぞれ、価値観は違う。野村は、メダルという形あるものは手にできなかった。しかし、彼女にとって北京での4位は、最高に輝く称号となったはずだ。

<了>
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