男子ファイナル検証――なぜフェデラーはナダルに勝てないのか?=全仏オープンテニス 男子シングルス決勝
圧倒的な強さを見せて勝利したナダル
全仏4連覇を達成し、優勝の味を噛み締めるラファエル・ナダル 【Getty Images/AFLO】
1−6、3−6、0−6――99年の全仏オープンで四大大会デビューしてからというもの、4ゲームしか奪えなかったことなど一度もない。また、ツアー大会も含めて0ー6をつけられた敗戦は、17歳だった99年7月以来の屈辱だ。
このコートでナダルと対戦すると、フェデラーはいつもフェデラーでなくなってしまう。今日は35本を記録したアンフォーストエラー(相手の攻撃に関わらずに犯すエラー)がそれを表している。ナダルはたったの7本だ。この差が勝敗を分けている。また、ネットに出たときのポイント確率が4割強しかないのもフェデラーのテニスではない。例えば、準決勝のモンフィス戦では8割近くを決めたのだ。
経験豊富な王者だから、これらのミスが精神的な影響でないことは確か。だとするとナダルのボールの質――恐らくスピンの性質とサーフェスの組み合わせが、フェデラーのテニスにどうしてもマッチしないタイミングを作るのではないだろうか。しかし、そのことを本人は語りたがらない。
「ここで試合をあれこれ分析したくない。大会は終わり、クレーシーズンも終わったことだし。ただ、違う結果だったら良かったのにと思うだけだ」。
せめて自分の口から語る言葉の中だけでも、望みを捨てたくないからか、「まだ勝てると思うか?」と問われて、「イエス」ときっぱり言った。
ローランギャロスでフェデラーか? ウィンブルドンでナダルか?
全仏では惨敗してしまったロジャー・フェデラー。2週間後に始まるウィンブルドンで借りを返せるか? 【Getty Images/AFLO】
お互いに、ショットの際どさにさほど違いのない時でも、ナダルは余裕でボールに届き、フェデラーは苦しい体勢を強いられる。その理由がナダルのオープンスタンスにあることはフェデラーも気付いているのだ。完全なオープンスタンスは、左右の動きをより短い距離で済ますことができる。
だからといってフェデラーもそうすればいいかというと、そうではない。フェデラーには、芝で最も快適なスタイルがある。世界1位をもう4年以上も守っているプレースタイルだ。
少し余談だが。以前ナダルは、「フェデラーがいる限り、世界1位にはなれないと思わないか」と聞かれて答えた。「幸い彼のほうが年だからね、僕より先に衰えてくれるはずだ」。フェデラーには同じ逃げ道がない。たとえピークを過ぎたとしても、自力で勝つしか道はないのだ。
心配になるのは、2週間後にもう開幕するウィンブルドンだ。フェデラーはそこでビョルン・ボルグの記録を抜く6連覇を目指す。ローランギャロスでフェデラーが勝つのが先か、ウィンブルドンでナダルが勝つのが先か、というのはこの3年ほどテニス界最大の関心事。芝の上ではただ“そこそこの”プレーヤーと思われていたナダルが、過去2年続けて決勝に進出し、特に昨年はフルセットの危ない展開だった。「ナダルのほうが先だ」ということを多くの人が思い始めた。
今日のライバル対決の結果を見てそれはほぼ確信に変わった。(文=山口奈緒美)
<了>
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