女子バレー、五輪切符が見えた4連勝

ヨーコゼッターランド

第2戦以降のチーム最多得点者・栗原。高橋、木村とともに効率的に得点を稼いでいる 【坂本清】

 大会4日目が終了し、二度目の休息日を迎えた日本は3試合を残してはいるが一息つける1日となった。第4戦ドミニカ共和国戦の勝利後に選手たちと話をしたが、この4日間のうち一番表情が和んでいた。北京行きの切符がよりはっきりと見えてきたことを実感できているのは見る側にとってもうれしいものである。

■効率的に得点を重ねた日本 パブロワ頼みのカザフに勝利

 日本がポーランドに3対1、プエルトリコに3対1で勝利を収めた後のカザフスタン戦。アジア勢との初試合はやはり、それまでの2試合とは異なる緊張感が漂う一戦となった。カザフスタンは初戦、セルビアに1対3で敗れ、続くポーランドにはストレート負け。もはや五輪出場枠はアジアで獲るしかないという勢いでの立ち上がりを日本戦で見せた。その気迫に一瞬、押されるままのゲーム展開になるかとも感じられたが、カザフスタンはミスから自滅の道を歩き始める。
 エースのパブロワは昨季のV・プレミアリーグで久光製薬に所属し、“パワーヒッター”として申し分ない活躍をした。エースたるもの、気の強さがなければその重圧がかかるポジションは務まらない。パブロワはその点でも合格だが、気性も激しいため、セッターと衝突することもしばしばあったという。カザフスタン代表としてプレーした日本戦でもその一面が何度も表れた。五輪出場権を獲得したいという並々ならぬ意欲と、「日本のバレーはチームの誰よりも熟知している」という自信が生み出すスパイクは強烈なものもあった。しかしそれと同じくらいのエラーも出た。まさに気負いすぎ、といった感じだった。公式記録でも42打数で22得点。カザフスタンチーム内で圧倒的にほかの攻撃者を上回っている。対する日本は、栗原恵が36打数17得点、高橋みゆきが27打数13得点、木村沙織が23打数11得点。誰も20得点台はいないが、攻撃の軸となる3人が平均して得点できているため、カザフスタンと比較するとはるかに効率的である。惜しいのはここに杉山祥子、または荒木絵里香の名前がないこと。ブロックはカザフスタン9に対して日本が11。攻撃の的も絞りやすかった分、数字にも反映されたといえる。
 また、カザフスタンも初戦のポーランドと同様、セッターに難あり。全体をとおしてカザフスタンは試合運びの効率の悪さが目立った試合となったが、日本がストレート勝ちを収めたのは何よりだった。外国勢にしては珍しく、試合終了後に、カザフスタンベンチで選手が涙していたのが印象に残る。今後、こういったチームがアジアの中で脅威となることは間違いないだろう。

要注意チームのドミニカ、トスが上がらず

パブロワ頼みのカザフに、ブロックで応戦する荒木(右)と高橋 【坂本清】

 日本にとって4勝目となった対ドミニカ共和国戦。この試合に勝てば日本はぐんと北京に近づくことになると、選手も周囲もよく分かっている。タイ、セルビア、ポーランドと対戦してきたドミニカは1勝2敗。多少、雑な部分もあるが初戦のタイ戦などから見ていると安定感が増したように見えるため、OG解説陣の中でもやはり「要注意」としていた。バルガスやデラクルス、そして誰よりも左利きの新星ヌニェスの攻撃が目をひいた。しかし、日本との試合が始まると、何となくドミニカ選手全員の動きが重い。とくにセッターのエチェニケがとにかくボールの下に入り切れない。「普通のトス」が上がらないのである。スコア上には表れないがトスミスが毎セット5〜6本はあった。そのほとんどがネットに近いため、跳躍力を誇る攻撃陣もこれを処理できるだけの器用さは持ち合わせていなかった。1、3、4セットとも中盤あたりまでは競り合いとなったが、結局はスパイクミスとサーブミスなどでドミニカが自滅。残念ながらはっきりとした精神的支柱がいないため、崩されたときの立て直しがままならない。ミスがほとんど出なかった第2セットのみ、ドミニカの潜在能力と恵まれた身体能力が見られたが、それまで。ただ、若い選手が多く、国際経験もこれからのドミニカ。成長途中のカリビアンパワーからは目が離せない。

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著者プロフィール

1969年、米国(サンフランシスコ)生まれ。6歳から日本で育ち、12歳で本格的にバレーボールを始める。早稲田大学卒業後に単身渡米し、米国ナショナルチームのトライアウトに合格。USA代表として1992年バルセロナ五輪で銅メダルを獲得し、1996年アトランタ五輪にも出場した。現在はスポーツキャスターとして、各種メディアへ出演するほか、後進の指導、講演、執筆など幅広く活動している。

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