広島と甲府 J2両巨頭の今季傾向と課題 宮崎キャンプリポート
大駒を欠く広島、その鍵を握る男は「ドラゴン久保」
とはいえ、甲府の運動量が落ちた終盤には「ディフェンスラインからパスをつなぐ」(DF森脇良太)本来のスタイルから1点を返すなど、やはり個人能力の高さは折り紙付きの広島。さらにU−23日本代表組のボランチ青山敏弘、MF柏木陽介といった大駒をけがで欠き、21日に宮崎入りしたクロアチア人FWユキッチもベールを脱いでいない状態での判断は、いささか早計と言わざるを得ない。
そしてもう1人、広島には「久保竜彦」という最終兵器が残っている。トルコキャンプからここまでは「彼は昨年長い間試合に出ていなかったので、試合勘を取り戻すことが必要」という指揮官の判断で、Bチームでプレーしていた彼だが、21日のB戦練習試合では「いい練習ができている」宮崎キャンプの成果を2ゴールで満天下に示すことに。中でも68分に篠原聖の落としたボールを左足ボレーで逆サイドネットにライナーで突き刺した2点目は、古参の広島記者をして「これでメシ3杯は食える」と言わしめる日本人離れしたドラゴンゴールであった。たとえ89分間消えていても、ものの数秒で敵を粉砕できる男がトップフォームを取り戻しつつあることは、ペトロビッチ監督にとっても実に心強い材料に違いない。
彼らは1年でJ1復帰を果たせるのか?
「J2の相手には格上も格下もないと思っているので、毎試合全力でやることが大事」(甲府FW羽地・昨年途中までJ2徳島ヴォルティスに所属)
「J2では奇麗なサッカーをすることも大事だが、気持ちを出さないとどんな下位のチーム相手でも取りこぼしてしまう。J2では油断は禁物」(広島DF森脇・昨年まで2年間愛媛FCに期限付き移籍)
もちろんこの日、彼らが見せたパフォーマンスはJ2を勝ち抜き、観客を楽しませるに十分値するもの。あとは2人の言葉にあるように、3月8日のJ2リーグ開幕までに闘志というガソリンを充填(じゅうてん)し、補給体制を整えられるかどうかがポイントとなるだろう。
今季は広島と甲府の両巨頭を中心に回っていくであろうJ2。果たして彼らは12月5日、「J1復帰」という切符を手に満面の笑みでJ2を後にできるだろうか? 今後も両チームの動向には要注目だ。
試合データ
広島2−2(前半1−1)甲府
<得点>
広島:久保竜彦(19分、68分)
甲府:ジョジマール(43分PK、74分)
<出場選手>
(広島)
GK:下田崇
DF:篠原聖 高萩洋次郎 ダバツ
ボランチ:遊佐克美(57分浅田裕史<ユース所属>) 横竹翔
MF:橋内優也 大崎淳矢<ユース所属> 清水航平(HT森保翔平<ユース所属>) 内田健太
FW:久保竜彦
(甲府)
GK:阿部謙作
DF:吉田豊(74分久野純弥) 寄井憲 山本僚 鶴見智美(74分輪湖直樹)
ボランチ:田森大己(80分練習生)
MF:保坂一成(31分國吉貴博) 美尾敦(86分神崎大輔)
FW:石原克哉(59分ブルーノ) ジョジマール 木村勝太
2試合目 15:00キックオフ
広島1−2(前半0−1)甲府
<得点>
広島:森崎浩司(82分直接FK)
甲府:羽地登志晃(32分)、51分井上雄幾
<出場選手>
(広島)
GK:木寺浩一
DF:森脇良太 ストヤノフ 槙野智章
ボランチ:戸田和幸
MF:李漢宰 桑田慎一朗 森崎浩司 服部公太
FW:平繁龍一 佐藤寿人
(甲府)
GK:鶴田達也
DF:杉山新 池端陽介 山本英臣 井上雄幾
ボランチ:林健太郎(57分田森大己、75分石原克哉)
MF:大西容平 藤田健
FW:前田雅文(70分ブルーノ) 羽地登志晃(75分ジョジマール) 宇留野純
<了>