DeNAの球団経営は新たなステージへ 赤字30億円がわずか5年で黒字化

週刊ベースボールONLINE

DeNAは(株)横浜スタジアムを買収し球場と一体経営が加速。東京五輪への期待もふくらむ 【写真:BBM】

 2011年には年間30億円あった赤字が5年で黒字に転換。一つのビジネスモデルとして球団経営のあり方を確立した横浜DeNAのアプローチは、新しいステージを迎えている。

スタジアムからボールパークへの転換

 11年12月の球団買収から丸5年が経過した。DeNAは劇的に経営を改善し、黒字化への道筋を作った。それは常勝チームへの力強い第一歩だ。買収時の赤字は年間約30億円とも言われていた。

 当時の横浜スタジアムには閑古鳥が鳴いていた。年間の座席稼働率は50.4%。池田純前球団社長はファンに球場へ足を運んでもらうことを最優先課題に挙げ、市場調査で年1〜3回球場を訪れる「ライト層」へのプロモーションを重視。加えて、比較的体力や金銭にも余裕のある30〜40代のアクティブなサラリーマンをターゲットに定めた。

 草の根の活動も絶やさなかった。選手にはファンサービスを徹底させ、神奈川県内の子どもたち72万人に野球帽を配布。さらに横浜市への転入者にチケットをプレゼントするなど、地域に根ざした球団を目指した結果、ファンは右肩上がりで増加。また「野球を見るスタジアムから、野球の雰囲気を楽しむボールパークに変わっていかないと、マーケットが増えない」(池田前社長)との考えから魅力的な球場作りを目指し「コミュニティーボールパーク化構想」を掲げた。次々に新しい企画を提示し、ファンを引きつけた。

球団と球場の一体経営を実現

ハマスタで満員御礼時に配られる大入りメダル。昨シーズンは54回を数えた 【写真:BBM】

 16年は主催試合における観客動員数は日本一になった1998年を超え、最多の約194万人。主催試合72試合のうち54試合が大入りで、稼働率は93.3%まで上昇した。ファンクラブの会員数は球団買収時の11.8倍となった。

 長年の課題だった球団と球場の一体経営も実現させた。昨年1月に株式公開買い付け(TOB)により、球場の運営会社である株式会社横浜スタジアムを連結子会社化。議決権ベースで71.12%の株式を総額74億2500万円で取得した。球団の最終的な保有割合は76.87%に増加。これまでは球場使用料として入場料収入の13%を支払っていた。

 また、大半が球場の収入となっていた看板広告料や飲食物販売の売り上げが球団へ。昨季は寮で選手が実際に食べているものと同じレシピの「青星寮カレー」やオリジナルビールを販売。ビールの販売量は15年対比で125%となった。コンサートなどプロ野球以外のイベント収入も手に入るようになり、一気に黒字化へ舵を切ることに成功した。

「横浜スポーツタウン構想」

「横浜スポーツタウン構想」の一つとして、旧関東財務局の建物を活用した新施設「THEBAYS」を3月にオープンさせる 【写真:BBM】

 新たに就任した岡村信悟球団社長は「この5年間で一定の成果を上げられた。これからの5年、10年は次のステージ」と話す。20年の東京五輪の野球・ソフトボールの主要会場となっている横浜スタジアムもこの機運に乗じて改修される見込みだ。

 関係者によると、マーケティングの結果、横浜スタジアムの適正収容人員は現在よりも約7000人多い3万6000人程度だという。球場が公園内にあるため条例や法律などの規制はあるものの、五輪はそれを乗り越える絶好機となるだろう。収容人員が増え、安定してファンが訪れるようになれば、それだけ収益も上がる。

 球場の社長も兼任する岡村球団社長は総務省出の元官僚。主に通信事業で活躍し、さまざまな分野の企業と連携してきた「公共の磁場」をつくるスペシャリストだ。今後のベイスターズを担う、うってつけの存在とも言える。

 1月12日には企業、役所、研究機関などと連携し、横浜市または神奈川県でのスポーツ事業の創出、活性化を目標とした「横浜スポーツタウン構想」を新たに掲げた。「スポーツ産業は成長分野。25年には15兆円に達するという規模。政府の取り組みを踏まえながら、スポーツ産業のフロントランナーになろうと思っている」と岡村社長は意欲的に話している。DeNAの歩みは力強く、確実に前進している。
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