DeNAを初CSへ導いたラミレス監督 選手起用で見られた計画性とデータの重視

日比野恭三

12球団最下位の年棒総額でもCSへ

球団史上初のCS進出を決め、ファンの歓声に応えるラミレス監督はじめDeNAの選手たち 【(C)YDB】

 9月19日、横浜DeNAは広島を3対1で下し、クライマックスシリーズ(CS)進出を決めた。2007年にCSが導入されて今年で10年目。12球団で唯一その舞台を踏んだことのないDeNAが、ようやく宿願を果たした。

 戦力指標の一つである年俸総額は今季も12球団中最下位(日本プロ野球選手会調べ、外国人・育成選手は除く)で、選手層は決して厚いとはいえない。過去を振り返れば、14年は9月上旬の時点で3位に3.5ゲーム差の4位につけていたが、ずるずると失速して最後は5位に後退。昨季も前半戦を首位で折り返しながら、最下位でシーズンを終えている。選手層の薄さが終盤になるほどあらわになり、文字通り「力尽きる」展開が続いていた。

 ところが今季は、7月13日から一度も3位の座を明け渡すことなく踏みとどまった。それはアレックス・ラミレス監督が、目の前の試合に力を注ぎつつも、先を見越して戦力の温存を心掛けてきたからにほかならない。

石田と今永の起用法に配慮

 石田健大の起用法が象徴的だ。開幕からローテーションを守り抜いてきた石田は、ここまで24試合に先発。だが、ラミレス監督が石田を8回のマウンドに送り込むことは一度としてなく、110球を超えて投げたのもわずかに1試合だけ。5〜7回を投げて球数が85〜100球前後に達すると、判で押したかのように継投策に踏み切った。その結果が、2年目左腕を9勝4敗、防御率2.96の好成績へと導いた。

「シーズンを通して、一番安定したピッチャーだ。安定した投球をしている理由に、無理をさせずに使い続けたということがある。若い選手はある程度制限することが将来につながってくる」

 ラミレス監督は石田について、そんなふうに語ったという。

 ドラフト1位ルーキーの今永昇太に対しても配慮は見える。12試合目の先発となった6月18日の東北楽天戦、4回4失点で5敗目を喫すると、休養の意味合いも込めてファームで調整する時間を迷わず与えたのだ。

 再昇格は、1カ月以上の間隔を空けた7月下旬。すると8月以降、登板した7試合連続で「6イニング以上・自責3以内」のクオリティスタートをマークし、後半戦ローテの一角として堂々とした働きを見せている。CSへのクリンチナンバーを1として迎えた9月19日の広島戦も6回2/3を1失点にまとめ、見事に重責を果たした。

 チームをCSに導く白星で8勝目を挙げた今永は言った。
「2軍で過ごした経験がなければ、今、こうやって元気に1軍で投げられているとは到底思えない。ラミレス監督には本当に、大事に大事に起用していただいたなと思っています」

一定の余力を残しているブルペン陣

 若手をシーズンの最終盤まで戦力として維持できたことに加え、9月に入ってからは三嶋一輝やモスコーソといった、2軍からの昇格組も奮闘している。広島のある関係者が「CSに出てきてほしくないのはベイスターズ。先発投手陣も5球団の中で一番いいし、怖い存在だ」とこぼしていたが、偽らざる本音と受け取っていいのではないか。

 ブルペン陣も、疲れの蓄積は当然あるとはいえ、一定の余力を残している。田中健二朗は「休むことを意識しすぎて力が出ないような体の状態になってしまった」という昨季の経験から、筋肉に一定の張りをもたせるためのトレーニングを続けてきた。須田幸太も、8月、9月を乗り切るための体力強化メニューをあえて開幕後に取り入れて、低めへの制球と球威を今に至るまで維持している。

 2人の今季登板試合数は須田が60試合、田中が59試合と、それぞれの自己最多を大幅に更新している。須田が「シーズン60試合を投げたい。三上(朋也)とタナケン(田中)と僕が60試合投げれば、見えてくるものもある」と語っていたのは5月のことだったが、その言葉どおりにCS出場権をつかみ取った。

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著者プロフィール

1981年、宮崎県生まれ。2010年より『Number』編集部の所属となり、同誌の編集および執筆に従事。6年間の在籍を経て2016年、フリーに。野球やボクシングを中心とした各種競技、またスポーツビジネスを中心的なフィールドとして活動中。

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